虚(きょ)・実(じつ)って何ですか?
― 東洋医学では、身体の状態を「虚」と「実」で考えます ―

はじめに
東洋医学には、「虚(きょ)」と「実(じつ)」という考え方があります。
患者さんから
「虚とか実って、何ですか?」
「難しそうな言葉ですね。」
とご質問をいただくことがあります。
確かに
普段の生活ではあまり耳にする言葉ではありません。
しかし、この「虚」と「実」は
経絡治療で身体の状態を考えるうえで、とても大切な考え方です。
以前ご紹介した「証(あかし)」は
四診法によって身体全体の状態を確認し
その方に合った施術方針を考えるものでした。
「虚」と「実」は
その身体の状態を考えるための大切な視点の一つです。
今回は
「虚」と「実」とは何か、
そして経絡治療ではなぜこの考え方を大切にしているのかを
できるだけわかりやすくご紹介します。
「虚」と「実」は、病名ではありません
「虚」や「実」は
病気の名前でも
診断名でもありません。
東洋医学では
今の身体がどのような状態にあるのか
を考えるための言葉です。
簡単にいうと
「虚」は
本来必要な働きや力が不足している状態。
「実」は
一部分に負担が集中し、働きが過剰になっている状態。と考えます。
ここで大切なのは
「虚だから悪い。」
「実だから悪い。」
ということではありません。
身体は常に変化しています。
疲れが続けば「虚」に傾くこともあります。
ストレスや緊張が続けば
一部に力が入り過ぎて「実」の状態になることもあります。
東洋医学では
その時々の身体の状態を知るために
「虚」と「実」という視点を大切にしています。
コップの水を思い浮かべてみてください
「虚」と「実」を理解するときに
コップの水を思い浮かべるとイメージしやすくなります。
コップの水が少なすぎると、飲みたいときに足りません。
反対に
あふれるほど入っていると、少し動かしただけでこぼれてしまいます。
どちらも、使いやすい状態とはいえません。
一番良いのは
必要な量の水がちょうど入っている状態です。
身体も同じです。
必要な力が不足していても
本来の働きを十分に発揮しにくくなります。
反対に
一部分だけに負担が集中し、働き過ぎていても
身体全体のバランスは崩れてしまいます。
経絡治療では
不足しているものは補い
過剰になっているものは取り除き落ち着かせる。
そのようにして
身体全体の調和を取り戻していくことを大切にしています。
同じ症状でも、「虚」と「実」で違うことがあります
例えば、肩こりで来院された二人の患者さんがいるとします。
どちらも「肩がつらい」という症状は同じです。
しかし
一人は
疲れがたまり
身体全体に元気がなく
少し動くだけでも疲れやすい状態かもしれません。
もう一人は
仕事や人間関係のストレスが続き
無意識に肩へ力が入り
筋肉が緊張している状態かもしれません。
同じ肩こりでも、身体全体の状態は同じではありません。
そのため経絡治療では
「肩こりだから、このツボ。」というように
症状だけで施術を決めることはありません。
四診法によって身体全体を確認し
その方が今どのような状態にあるのか
を考えながら、施術方針を決めていきます。
ここに
経絡治療が「身体全体を診る」ことを
大切にしている理由があります。
「虚」と「実」は、一つの身体の中に同時に存在することもあります
「虚」と「実」は
どちらか一方だけがあるとは限りません。
実は
一人の身体の中に「虚」と「実」が
同時に存在していることも少なくありません。
例えば
疲れが続き
身体全体の元気は不足している。
それでも仕事では気を張り続け
肩や首には強い緊張がある。
あるいは
胃腸の働きは弱っているのに
ストレスによって胸や脇が張っている。
このような状態は、日常の臨床でもよくみられます。
つまり
身体全体をみると
不足している部分もあれば
過剰になっている部分もある。
これが東洋医学の身体の見方です。
だからこそ経絡治療では
一つの症状だけではなく
身体全体の状態を確認することを大切にしています。
「虚」と「実」を見極めることで、その方に合った施術を考えます
以前の記事でご紹介したように
経絡治療では
四診法によって身体全体の状態を確認し
「証(あかし)」を立てます。
その証をもとに
どの経絡を整えるのか。
どの経穴(ツボ)を選ぶのか。
どのような刺激が適しているのか。
そうした施術方針を考えていきます。
このとき 「虚」と「実」は
とても大切な判断材料になります。
経絡治療では
虚の状態には「補法(ほほう)」という手技を用いて補い
実の状態には「瀉法(しゃほう)」という手技を用いて取り除く。
このように
それぞれの状態に合わせた手技を使い分けながら
身体全体の調和を目指します。
もちろん
「虚」と「実」のどちらかだけを考えるのではありません。
身体全体の状態を総合的にみながら
その方に最も適した施術を組み立てていくことが
経絡治療の特徴です。
「虚」と「実」は、身体からのメッセージでもあります
「虚」や「実」は
身体に貼られたレッテルではありません。
今の身体が
「少し疲れがたまっていますよ。」
「この部分は頑張り過ぎていますよ。」
と教えてくれているサインのようなものです。
例えば
忙しい毎日が続けば
身体は少しずつ疲れをためていきます。
緊張する出来事が続けば
無意識のうちに肩へ力が入り続けることもあります。
その積み重ねが
「虚」や「実」という身体の状態として表れてくるのです。
東洋医学では
こうした身体からのサインを見逃さず
その方が本来持っているバランスを取り戻せるように整えていきます。
大切なのは、「虚」でも「実」でもない状態を目指すことではありません
ここで一つ
誤解していただきたくないことがあります。
経絡治療の目的は
「虚をなくすこと」
「実をなくすこと」ではありません。
本当に大切なのは
その方が本来持っている生命力や
自然治癒力が十分に発揮できる身体へ整えることです。
そのために
四診法によって身体全体を確認し
証を立て
「虚」と「実」を見極めながら施術を行います。
「虚」と「実」はゴールではなく
身体全体を理解し
その方に合った施術を行うための大切な考え方なのです。
最後に
東洋医学には
「虚」と「実」という
身体の状態をみる考え方があります。
一見
難しい言葉に感じるかもしれませんが
特別なものではありません。
私たちの身体は
疲れたり
頑張り過ぎたりしながら
毎日少しずつ変化しています。
その変化を四診法で丁寧に確認し
「今の身体はどのような状態なのだろう」と考えることが
経絡治療の第一歩です。
そして
不足しているものは補い
過剰になっているものは取り除きながら
身体全体の調和を目指していきます。
それは
症状だけを見るのではなく
その方が本来持っている生命力や
自然治癒力が働きやすい状態へ導くためです。
無理に施術をおすすめすることはありませんので
「東洋医学では身体をどのように考えているのだろう」
「自分の身体の状態を知ってみたい」
と感じられた方は、一度ご相談ください。
関連リンク
・「証(あかし)」って何ですか?
https://shinshin-chouwa.com/blog2026-0707om/
・経穴(けいけつ・ツボ)って何ですか?
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・どうして毎回、身体全体の状態を確認するのですか?
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