一本の鍼で、何をしているのですか?
― 脉診流・経絡治療では、鍼を刺している時間にも大切な意味があります ―

はじめに
施術を受けられた患者さんから
「鍼を刺したあと、先生は何をしているのですか?」
「先生は鍼を持ったままですが、何か意味があるのですか?」
と、ご質問をいただくことがあります。
確かに患者さんから見ると
鍼を刺したあと
しばらく手を添えているように見えるかもしれません。
しかし
私が行っている脉診流・経絡治療では
その時間にも大切な意味があります。
一本の鍼をただ刺して終わりではなく
鍼を刺した後に
身体の反応を感じ取りながら
その方に合わせた手技を行っている時間なのです。
今回は
一本の鍼で何をしているのかをご紹介します。
一本の鍼にも、施術の目的があります
経絡治療では
「ここが痛いから、このツボに鍼をする」
というように
症状だけを見て施術を行うわけではありません。
これまでご紹介してきたように
脈やお腹、お身体の様子、お話などをもとに四診を行い
その日の身体全体の状態を確認します。
そして
「今の身体には何が必要なのか」を考え
施術方針(証)を立てます。
そのうえで
どの経絡に
どの経穴(ツボ)を選び
どのような手技を行うか
を決めていきます。
つまり
一本の鍼にも
「なぜこの場所に鍼をするのか」
という明確な目的があります。
鍼を刺したあとも、施術は続いています
私が行っている脉診流・経絡治療では
基本的に、鍼を刺してから抜くまで、鍼柄から手を離しません。
患者さんから見ると
「そのまま持っているだけ」に見えるかもしれません。
しかし実際には
鍼先から伝わる感覚や
お身体の反応に意識を向けながら
施術を行っています。
そして
その方の身体の状態に合わせて
必要な手技を加えていきます。
この時間は
ただ鍼を留めている時間ではありません。
身体の変化を感じ取りながら
必要な刺激を丁寧に伝えている時間なのです。
手技は、その方の身体の状態によって変わります
身体の状態は一人ひとり異なります。
そのため
同じ経穴を使ったとしても
いつも同じ施術を行うわけではありません。
不足しているものを補う必要があるのか。
過剰になっているものを取り除く必要があるのか。
身体がどのような状態なのかによって、行う手技も変わります。
だからこそ
施術は毎回同じにはなりません。
一本の鍼にも
その日の身体に合わせた意味があります。
「長く刺す」ことが目的ではありません
患者さんの中には
「鍼は長く刺していた方が効くのですか?」
と聞かれる方もいらっしゃいます。
しかし、私が行っている脉診流・経絡治療では、
長く刺しておくことを目的にはしていません。
大切なのは
どれくらい身体が変化しているかです。
必要な変化があれば、すぐに抜鍼することもあります。
反対に
身体の状態によっては
少し長めに鍼を留めながら、手技を行うこともあります。
時間を基準にするのではなく
身体の反応を基準に施術を進めていきます。
一本の鍼にも、「始まり」と「終わり」があります
一本の鍼による施術は
「刺して、抜く」という単純な動作ではありません。
私が行っている脉診流・経絡治療では
一本の鍼の中にも、一連の流れがあります。
まず
その日の四診から得られた情報をもとに
「この経穴で、どのような手技を行うのか」を考えます。
そして
患者さんの状態に合わせた
角度や深さで鍼を刺入し
鍼先から伝わる反応や、身体の変化に意識を向けながら
施術を進めていきます。
その方に必要な反応が起こったと判断したら
補法・瀉法それぞれの目的に合わせた方法で抜鍼します。
最後に
その経絡を切経(せっけい)し
身体がどのように変化したかを確認します。
一本の鍼にも
「何を目的に行い、どう変化したかを確かめる」
という流れがあるのです。
施術者は、「鍼」ではなく「身体」を診ています
施術中、患者さんからは
「先生は鍼を見ているのかな?」
と思われることがあるかもしれません。
しかし、私が意識を向けているのは
鍼そのものではありません。
患者さんのお身体です。
鍼先から伝わる感覚。
皮膚や経絡の変化。
施術によって身体がどのように応えているか。
そうした小さな変化を感じ取りながら
「今、この刺激で十分か」
「もう少し手技を続けた方がよいか」 を判断しています。
だからこそ
施術は時間で決まるものではなく
その方のお身体の反応によって変わります。
一本一本の積み重ねが、身体全体を整えていきます
経絡治療では
一本の鍼だけで終わることもあれば
複数の経穴を使うこともあります。
しかし、どの場合でも
「必要だから、この一本を行う」
という考え方は変わりません。
例えば家を建てるときも
一本一本の柱には、それぞれ役割があります。
「とりあえず柱を増やせば丈夫になる」
わけではなく
必要な場所に、必要な柱があることで
家全体のバランスが保たれます。
経絡治療の鍼も同じです。
一本一本に目的があり
その積み重ねによって
身体全体の調和を目指していきます。
経絡治療は、「身体との対話」を大切にしています
東洋医学では
身体は常に変化していると考えます。
そのため
前回と同じ症状でも
同じ経穴になるとは限りません。
同じ経穴を使ったとしても
同じ手技になるとは限りません。
施術者が一方的に進めるのではなく
身体の反応を確認しながら進めていく。
これが
私が行っている脉診流・経絡治療の大切な考え方です。
一本の鍼は
施術者が身体へ働きかけるだけではありません。
身体から返ってくる反応を受け取りながら
一緒に施術を進めていく時間でもあるのです。
最後に
患者さんから見ると
一本の鍼は短い時間で終わるように感じるかもしれません。
しかし、その短い時間の中にも
「どのような手技を行うか」
「身体はどのように反応しているか」
「十分な変化が得られたか」
など
多くのことを確認しながら、施術を行っています。
だからこそ、経絡治療では
鍼の本数や時間ではなく
その方のお身体にとって
今どのような刺激が必要なのか
を大切にしています。
一本の鍼には、その日の身体に合わせて意味があります。
無理に施術をおすすめすることはありませんので
「どのような考え方で施術を行っているのか知りたい」
「自分の身体に合った鍼灸を受けてみたい」
と感じられた方は、一度ご相談ください。
関連リンク
・どうして少ない鍼で身体が変わるのですか?
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