鍼灸でいう「気」って、結局なんなの?

― 東洋医学で考える「気」と、経絡治療との関係 ―

「鍼灸では、気を整えます」

「気血の巡りを整えます」

鍼灸や東洋医学の話をすると、「気」という言葉がよく出てきます。

でも、

「気って、結局なんなの?」

と思ったことはありませんか?


「気」と聞くと、目には見えないものなので、少し不思議な感じがするかもしれません。

けれど、実は私たちの周りには「気」という言葉がたくさんあります。

私たちの周りには「気」があふれている

例えば、

元気
雰囲気
天気
気候
電気

など。

人についても、

「元気がない」

「気分がいい」

「気が重い」

「気が合う」

「気を使う」

など、私たちは普段から「気」という言葉を自然に使っています。


初対面の方に会ったとき、

「この人とは仲良くなれそう」

「なんとなくこの人とは合わないかもしれない」

と感じることもありますよね。


もちろん、その感覚だけで相手のことを決めつけることはできません。

でも、表情や声、話し方、姿勢、動きなどから、私たちは相手の状態やその場の雰囲気を無意識に感じ取っています。


このように考えると、「気」という言葉は、決して特別なものではありません。

では、東洋医学では「気」をどのように考えているのでしょうか。

東洋医学では「気」をどう考えるの?

東洋医学では、気を生命活動を支える基本的なもののひとつとして捉えます。

身体を動かすこと。

呼吸をすること。

食べたものを身体の働きにつなげていくこと。

体温を保つこと。

外から身体を守ること。

身体の中のさまざまなものを、本来あるべき方向へ動かすこと。


こうした生命活動を考えるときに、「気」という考え方が使われます。


現代医学では、身体の働きを臓器や神経、ホルモン、血液など、それぞれの仕組みから細かく捉えていきます。


一方、東洋医学では、身体をひとつながりのものとして捉え、その働きや変化を「気」「血」「津液」などの概念を使って考えていきます。

そのため、「気=現代医学でいう○○」と一つのものに置き換えることはできません。


東洋医学独自の身体の捉え方、と考えると分かりやすいと思います。

「気」には、いろいろな働きがあります

東洋医学では、「気」をただ「元気」という一つの意味だけでは考えません。

気には、

身体を動かす働き

身体を温める働き

身体の中のものを適切な場所に保つ働き

身体を外から守る働き

身体のさまざまな働きを正常に保つ働き

などがあると考えます。


例えば、身体を動かすためにも「気」が必要です。

食べたものから身体に必要なものをつくる働きや、身体の中のものを巡らせる働きにも「気」が関わっていると考えます。


このように考えると、「気」は単純に「元気がある・ない」だけではないことが分かります。

「気」は、どこから来るの?

東洋医学では、気にもいくつかの種類があります。


生まれ持ったものに関係する先天の気。

食べ物や呼吸など、日々の生活からつくられるものに関係する後天の気。

そして、身体の中を巡って働く気があります。


つまり、東洋医学では、

生まれ持ったものだけでなく、毎日の食事や呼吸、睡眠、生活の仕方なども、身体の「気」に関係すると考える

わけです。


だから、同じ年齢の人でも、疲れ方や体力の感じ方が違ったり、

同じ人でも「今日は元気だけど、今日は疲れている」といった変化が起こります。


その日の身体の状態をみることが大切になるのです。

「気」と「血」は別々ではありません

ここで、経絡治療でもよく出てくる「気血」という言葉につながります。

東洋医学では、「気」と「血」は別のものとして考えながらも、お互いに関係し合っていると捉えます。

例えば、気には血を巡らせる働きがあると考えられています。

そのため、気の働きが弱くなれば血の巡りにも影響しますし、反対に血の状態が変われば気の働きにも影響すると考えます。


つまり、

気だけを見ていればいいわけではありません。

気、血、そしてそれらが巡る経絡。

さらに五臓六腑などの状態も合わせて考えていきます。


これが、東洋医学で身体を部分だけではなく、全体としてみていく理由のひとつです。

「気が足りない」と「気が滞る」は違います

「気の巡りが悪い」という言葉を聞くことがあると思います。

でも、東洋医学では、

気が足りない状態

と

気が滞っている状態

を同じものとして考えるわけではありません。


例えば、東洋医学では

疲れやすい

力が出ない

元気がない

などの場合には、「気が不足しているのではないか」と考えることがあります。


一方で、

「身体は疲れているのに、気持ちが落ち着かない」

「胸やお腹が張る感じがする」

「ため息が多い」

「なんとなくスッキリしない」

などの場合には、気の巡りがうまくいっていないのではないか、と考えることがあります。


もちろん、こうした症状だけで「気虚」「気滞」と決めるわけではありません。


脈やお腹、経絡、舌、症状、生活の状態などを合わせて、その人のお身体をみていきます。

経絡は「気血が巡る道」と考えます

ここで、経絡治療の「経絡」が出てきます。

東洋医学では、経絡は気血が巡る通り道として考えられています。

身体の中には、さまざまな経絡が走っていると考えられていて、それぞれが身体のいろいろな部分と関係しています。

だから、肩がつらいからといって、必ず肩だけをみるわけではありません。

前回の記事でもお話ししたように、肩の症状に対して手や足など、症状のある場所から離れた経穴を使うことがあります。


これは、

「身体は部分ごとに完全に分かれているわけではない」

という東洋医学の考え方があるからです。


経絡のつながりを利用して、離れた場所からアプローチすることがあります。

経絡治療では「気」をどうみているの?

しんしん調和鍼灸院で行っている経絡治療では、気だけを直接みているわけではありません。

四診法を使って、

  • お話を伺う
  • お身体の様子をみる
  • 声や呼吸などを確認する
  • 脈をみる
  • お腹をみる
  • 経絡の状態を触れて確認する

など、さまざまな情報を集めます。

そして、その情報をもとに「証(あかし・しょう)」を立てて、どの経絡にどのような働きかけが必要なのかを考えます。

これが、経絡治療で行っている「本治法」につながります。

本治法では、なぜ症状のない場所に鍼をするの?

例えば、肩こりがあったとしても、本治法では肩だけをみているわけではありません。

脈やお腹、経絡の状態などから、お身体全体のバランスを確認します。

そのうえで、バランスがくずれている経絡に関係する経穴へ鍼をして、気血の巡りを整えていきます。

そのため、

「肩がつらいのに、どうして足に鍼をするの?」

ということも起こります。


これは、肩を無視しているわけではありません。

症状が出ている場所だけではなく、その症状につながっている身体全体をみているからです。


そして、必要に応じて標治法で肩そのものにもアプローチします。


このように、

本治法で身体全体を整え、

標治法で今気になっている症状に対応する。

この両方を行うことで、経絡治療としてお身体をみていきます。

「気を整える」とは、何かを足すだけではありません

「気を整える」というと、

「気を増やすことなのかな?」

と思うかもしれません。

でも、いつでも「足せばいい」というわけではありません。


気が不足していると考えれば、補うことを考えます。

気の巡りが滞っていると考えれば、巡りを整えることを考えます。

身体の中で気がうまく働いていないと考えれば、その働きを助けるように施術します。


つまり、その人の状態によって、必要なアプローチが変わるということです。

だからこそ、経絡治療では毎回同じ経穴に鍼をするとは限りません。


その日の脈やお腹、経絡の状態を確認して、今のお身体に必要なところを選んでいきます。

目に見えないものを、どうやってみているの?

ここが、東洋医学の面白いところかもしれません。

「気は目に見えないのに、どうして分かるの?」

と思いますよね。

気そのものを目で見ているわけではありません。


脈の状態。

お腹の硬さや張り。

経絡に触れたときの感触。

皮膚の状態。

症状の出方。

睡眠や食欲。

疲れ方。

気分の変化。


そうした身体に現れているさまざまな情報から、東洋医学の考え方を使って身体の状態を捉えていきます。


例えば、「なんとなく身体が重い」という感覚も、東洋医学では大切な情報のひとつです。

「検査では何も問題がないから、気のせい」と片づけるのではなく、

「今のお身体には、どんな変化が起きているのだろう?」

という視点でみていきます。

「気」を知ると、経絡治療が少し分かりやすくなる

経絡治療では、目に見えている症状だけを追いかけるのではありません。

その症状が出ているとき、

気はどう働いているのか。

血はどうなっているのか。

経絡の状態はどうなのか。

身体全体のバランスはどうなっているのか。

そうしたことを考えながら、お身体をみていきます。


だから、「肩こりだから肩だけ」「頭痛だから頭だけ」とは限りません。

症状が同じでも、その人の身体の状態によって、使う経穴も施術の方法も変わります。


「気」という言葉だけを聞くと、少し分かりにくいかもしれません。

でも、元気、雰囲気、気分、気が合う……。

私たちは毎日の生活の中で、すでに「気」という言葉を使いながら暮らしています。


東洋医学では、その「気」を身体の働きのひとつとして捉え、血や経絡との関係をみながら、お身体全体の状態を考えていきます。


しんしん調和鍼灸院では、目にはみえないけれど働きのあるものにも目を向けながら、経絡治療を行っています。

「症状のあるところだけではなく、身体全体をみてほしい」

「東洋医学では、自分の身体をどう捉えるのか知ってみたい」

そんな方に、経絡治療の考え方を知っていただけたらと思います。


無理に施術をおすすめすることはありませんので、

「自分の身体の状態を東洋医学の視点からみてみたい」と感じる方は、お気軽にご相談ください。

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