身体の力を抜きたいのに、うまく抜けないのはなぜ?
― 毎日の緊張に気づき、身体をゆるめる習慣をつくりましょう ―

休んでいるつもりなのに、身体に力が入っていませんか?
家事や育児、仕事など、毎日やることがたくさんあると、自分の身体の状態を気にする余裕がなくなってしまうことがあります。
目の前のことを一生懸命こなしているうちに、知らず知らずのうちに肩に力が入っていたり、歯を食いしばっていたり。
気がつくと、首や肩がガチガチになっていることはありませんか?
ようやくひと息ついたときにも、肩が上がったままだったり、頭の中では次にやることを考えていたり。
身体を休めているつもりでも、緊張が続いていることがあります。
こうした状態が長く続くと、肩に力が入っていることや、身体がこわばっていること自体に気づきにくくなります。
いつの間にか、それが自分にとっての「普通」になってしまうのです。
身体の力を抜くためには、
ただ横になったり、
休みの日を増やしたりするだけでなく、
自分がどんなときに力を入れているのかに気づき、意識的に緩める時間をつくることも大切です。
今回は、身体が緊張しやすくなる理由と、日常生活の中で取り入れやすいセルフケアを5つご紹介します。
なぜ、身体の力が抜けにくくなるのでしょうか?
1.緊張した状態が、いつもの状態になってしまう
仕事中は集中してパソコンを見続ける。
家事では前かがみになって手を動かす。
育児では子どもの様子に気を配り、すぐに動けるようにしている。
このように、日常生活には身体に力が入りやすい場面がたくさんあります。
一時的に筋肉が緊張すること自体は、身体を動かしたり、姿勢を保ったりするために必要な反応です。
ただ、同じ姿勢を長く続けたり、気を張る時間が長くなったりすると、筋肉を十分にゆるめる機会が少なくなります。
その状態が習慣になると、肩が上がっていることや、首に力が入っていることに気づかなくなる場合があります。
たとえば、こんな姿勢に心当たりはありませんか?
- 肩がすくみ、首が短くなったように見える
- 肩が内側に入り、背中が丸くなっている
- 頭が前に出て、首の後ろが張っている
- 座っているとき、無意識に歯を食いしばっている
- スマートフォンやパソコンを見るとき、呼吸が浅くなっている
もちろん、姿勢には筋力や関節の状態、作業環境など、さまざまな要因が関係します。
これらの姿勢がすべて緊張だけで起こるわけではありません。
ただ、身体に力を入れ続ける習慣があると、首や肩などの筋肉に負担がかかりやすくなります。
まずは、姿勢を無理に正そうとするよりも、自分の身体に余計な力が入っていないかを確かめることから始めてみましょう。
2.気持ちが休まらないと、身体も休みにくい
身体の緊張には、気持ちの状態も関係しています。
仕事の段取りを考えているとき、家族のことを心配しているとき、失敗しないように気を張っているとき。
頭の中で考え続けていると、身体もすぐに動けるような状態を保ちやすくなります。
休憩していても、頭の中では次にやることを考えている。
家に帰ってからも仕事のことが気になる。
そんな状態では、身体を休める時間があっても、気持ちまで休まらないことがあります。
もちろん、考えごとを完全になくす必要はありません。
ただ、何かをしている時間だけでなく、何もしなくてもよい時間を、意識してつくることも身体を休めるための工夫のひとつです。
3.力を入れることには慣れていても、ゆるめることには慣れていない
頑張ることが習慣になっている人は、
身体に力を入れて活動することには慣れていても、力を抜いて休むことには慣れていない場合があります。
「まだやることがあるから」
「これくらいで休んではいけない」
「自分がやらなければ」
そんな思いから、疲れていても動き続けてしまうこともあるでしょう。
身体の力を抜こうと意識しても、どうすればよいのかわからない。
休んでいると、かえって落ち着かない。
そんなときは、いきなり長時間休もうとする必要はありません。
まずは、肩の力を抜く、息をゆっくり吐く、温かいものに触れるなど、短い時間でできることから始めてみましょう。
身体がゆるむ感覚を少しずつ確かめていくことで、
自分がどんなときに緊張し、どんなときにリラックスしやすいのかにも気づきやすくなります。
東洋医学では、身体の緊張をどう考えるのでしょうか?
東洋医学では、身体の状態を部分だけで捉えるのではなく、心と身体をひとつながりのものとして考えます。
身体のこわばりや気持ちの落ち着かなさを考えるときにも、筋肉だけを見るのではなく、気血の巡りや、身体全体のバランスに目を向けます。
気の巡りと、身体のゆるみ
東洋医学では、身体の働きを「気・血・津液(しんえき)」などの観点から捉えます。
気は、生命活動を支えるものとして考えられており、全身を巡りながら身体のさまざまな働きに関わるとされています。
精神的な緊張や気疲れが続くときには、気の巡りが滞りやすくなると考えます。
その際に関係する臓腑のひとつが「肝」です。
東洋医学でいう肝には、気の巡りを調節し、全身の働きを円滑に保つ役割があると考えられています。
緊張やストレスが続くと、気の巡りが滞り、胸やお腹が張る感じ、ため息が増える、首や肩がこわばるといった状態につながることがあると捉えます。
また、今回のテーマである呼吸や身体の緊張を考えるうえでは、「肺」も関係します。
東洋医学でいう肺は、呼吸を通じて気を取り込み、全身に気を巡らせる働きや、身体の表面を守り、潤いを行き渡らせる働きなどに関係すると考えられています。
呼吸が浅くなっていたり、息を詰めるようにして作業を続けていたりすると、身体の緊張に気づきにくくなることがあります。
東洋医学では、肺の働きと呼吸の関係にも目を向けながら、身体全体の状態を考えていきます。
肝と肺は、それぞれ異なる働きを担っていますが、どちらも気の巡りに関係しています。
緊張が続くときには、気持ちの面だけでなく、呼吸や姿勢、身体のこわばりなども含めて状態を捉えることが大切です。
経絡治療では、肩がこっているから肩だけに鍼をする、という考え方だけではありません。
脈やお腹、経絡やツボの反応などから、そのときのお身体の状態を確認し、全身のバランスを考えながら施術します。
セルフケアでも、肩をほぐすことだけに集中するのではなく、ゆっくり息を吐く、姿勢を変える、温かさを感じながら休むなど、身体全体に目を向けることが役立ちます。
身体の力を抜きやすくするセルフケア5つ
ここからは、日常生活の中で取り入れやすい方法を5つご紹介します。
特別な道具や長い時間は必要ありません。全部を一度に始める必要もないので、取り入れやすいものから試してみてください。
① 息をゆっくり吐いて、肩の力をゆるめる
緊張しているときは、呼吸が浅くなったり、息を止めるような状態になったりすることがあります。
呼吸を無理に深くしようとすると、かえって肩や胸に力が入る場合もあるため、まずは息を吐くことから始めてみましょう。
やり方
- 椅子に座るか、楽な姿勢で立ちます。
- 肩やあごに力が入っていないか、軽く確かめます。
- 鼻から自然に息を吸います。
- 口から、吸うときよりも少し長めに、ゆっくり息を吐きます。
- これを3〜5回ほど繰り返します。
息を吐くときに、肩を下げようと頑張る必要はありません。
吐く息と一緒に、肩や首の力が少しゆるむ感覚があるかを確かめてみてください。
仕事の合間や家事がひと段落したとき、寝る前などに行うのがおすすめです。
呼吸を続けて苦しくなったり、めまいを感じたりした場合は、無理をせず自然な呼吸に戻してください。
② 肩を上げてから、ストンと下ろす
肩に力が入っていることに気づいても、いきなり力を抜くのは難しい場合があります。
そんなときは、いったん肩に軽く力を入れてから、ゆるめる方法を試してみましょう。
やり方
- 椅子に座り、背中を無理のない位置にします。
- 息を吸いながら、両肩を耳に近づけるようにゆっくり持ち上げます。
- 2〜3秒ほど、その状態を保ちます。
- 息を吐きながら、肩をストンと下ろします。
- 肩の重さや首まわりの感覚を確かめます。
これを3回ほど繰り返します。
大きく肩を上げる必要はありません。
痛みが出ない範囲で行いましょう。
肩を下ろしたあとに、首が少し動かしやすくなったり、肩まわりが軽く感じられたりすることがあります。
普段は肩に力が入っていることに気づきにくくても、
いったん力を入れてからゆるめると、力が抜けた状態との違いを感じやすくなります。
③ 胸を開いて、前かがみの姿勢をリセットする
スマートフォンやパソコンを長時間使っていると、頭が前に出て、肩が内側に入りやすくなります。
家事で下を向いて作業するときも、同じような姿勢が続きがちです。
この姿勢が長く続くと、首や肩、背中の筋肉に負担がかかりやすくなります。
そこで、作業の合間に胸まわりをゆっくり動かしてみましょう。
やり方
- 椅子に座るか、足を肩幅程度に開いて立ちます。
- 両肩を軽く後ろに引き、胸の前が広がるようにします。
- 肩甲骨を強く寄せようとせず、胸が自然に開く位置で5秒ほど保ちます。
- 力を抜き、いつもの姿勢に戻ります。
- 呼吸をしながら、2〜3回繰り返します。
腰を反らせたり、あごを突き出したりしないように気をつけてください。
大切なのは、胸を張った姿勢をずっと維持することではありません。
同じ姿勢を続けず、ときどき身体を動かすことです。
30〜60分に一度を目安に、立ち上がる、肩を回す、少し歩くなど、短い動きを挟んでみましょう。
「正しい姿勢を保たなければ」と頑張りすぎると、それ自体が新たな緊張につながることもあります。
楽に動ける姿勢を探してみてください。
④ 温かさを利用して、身体がゆるむ時間をつくる
身体が冷えていると、無意識に肩をすくめたり、身体を縮めたりすることがあります。
温かいものに触れると、ほっとして身体の力が抜けるように感じることはありませんか?
温めることは、日常生活で取り入れやすいセルフケアのひとつです。
具体的な方法
- 入浴では、熱すぎないお湯に無理のない時間だけ浸かる
- 首や肩に、心地よい温度の蒸しタオルを当てる
- 温かい飲み物を、急がずゆっくり飲む
- 目を閉じて休む時間に、心地よい温度のアイマスクを使う
- 冷房の効いた場所では、羽織るものなどで冷えを調節する
温める場所は、必ずしも肩だけでなくてかまいません。
手や足、お腹など、自分が心地よいと感じるところを選んでみてください。
ただし、熱すぎるものを長時間当てると、やけどにつながるおそれがあります。
温度を確かめ、皮膚の感覚が鈍い部分や、熱さを感じにくい状態では特に注意しましょう。
温めることそのものを目的にするのではなく、温かさを感じながら、いったん手を止めて休む時間をつくることも意識してみてください。
⑤ 1日の中に「何もしない時間」を予定として入れる
忙しい毎日の中では、やることが終わってから休もうと考えがちです。
ところが、家事や仕事には終わりがなく、次々にやることが見つかる場合もあります。
休む時間を後回しにしていると、気づいたときには疲れがたまっていることもあるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、休息を「時間が余ったらすること」ではなく、あらかじめ予定に入れておく方法です。
具体的な方法
- 朝、飲み物を飲む5分間はスマートフォンを見ない
- 昼食のあと、すぐに仕事へ戻らず5分だけ座って休む
- 帰宅後、家事を始める前に一度座る
- 入浴後は、次の用事に取りかかる前にゆっくり呼吸する
- 寝る前の10分間は、仕事や家事の段取りを考えずに過ごす
最初から長い休息時間をつくろうとしなくても大丈夫です。
まずは1日5分、自分のために使う時間を決めてみましょう。
休んでいる間に、やるべきことが頭に浮かんでも、無理に考えを追い払う必要はありません。
「あとで考えよう」と区切りをつけて、今の身体の感覚に少し意識を向けてみてください。
肩が上がっていないか、あごを噛みしめていないか、呼吸が止まっていないか。
そんな小さなことを確かめるだけでも、自分の緊張に気づくきっかけになります。
休息を取ることは、頑張ることをやめるという意味ではありません。
これからも無理なく日々を過ごすために、自分の身体を休ませる時間を確保することです。
身体を変えるために、頑張りすぎなくても大丈夫
今回ご紹介した5つのセルフケアは、どれも一度行えば身体が変わる、というものではありません。
長い間続いてきた姿勢や生活習慣は、すぐには変わらないこともあります。
セルフケアをしても、忙しい日にはまた肩に力が入ることもあるでしょう。
それでも、緊張していることに気づいたときに肩をゆるめる。
呼吸が浅くなっていると感じたら、ゆっくり息を吐く。
疲れを感じる前に、少し休む。
こうした小さな積み重ねが、自分の身体の状態を知り、休息を取り入れる習慣につながっていきます。
身体の緊張に気づくことは、自分が頑張りすぎていないかを振り返る機会にもなります。
家事や育児、仕事を一生懸命に続けていると、自分のことは後回しになりがちです。
だからこそ、何かを頑張る時間だけでなく、ほっとひと息つく時間も、毎日の中に取り入れてみてください。
経絡治療で、身体全体の状態を整える
セルフケアを続けていても、
首や肩のこわばりが気になる、
休んでも疲れが抜けにくい、
身体の力を抜く感覚がわからない。
そんなときには、身体全体の状態を確認してみることもひとつの方法です。
しんしん調和鍼灸院では、経絡治療を専門に、一人ひとりのお身体と丁寧に向き合っています。
経絡治療では、脈やお腹、経絡やツボの反応などを確認し、そのときのお身体の状態に合わせて施術を組み立てます。
全身のバランスを考える「本治法」と、首や肩など、今気になっている部分に対応する「標治法」を組み合わせて施術します。
肩がこっているから肩だけに施術するのではなく、身体全体の状態を確認しながら、必要なツボを選んでいきます。
施術だけでなく、普段の姿勢や休息の取り方など、日常生活で気をつけたいことをお伝えすることもあります。
無理に施術をおすすめすることはありませんので、
「休んでいるつもりなのに、身体の緊張が抜けない」と感じる方は、一度ご相談ください。
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