鍼灸で「気血の巡りを整える」ってどういうこと?
― 気と血の関係から知る、東洋医学と経絡治療の考え方 ―

鍼灸や東洋医学について調べていると、
「気血の巡りを整える」
という言葉を目にすることがあります。
しんしん調和鍼灸院で行っている経絡治療でも、気血の巡りを整えることを大切にしています。
でも、初めて聞く方にとっては、
「気血って何?」
「巡りを整えるって、血流をよくするということ?」
「そもそも、気が巡るってどういうこと?」
と、疑問に感じるかもしれません。
今回は、東洋医学でいう「気血の巡り」について、身近な身体の変化を例にしながらお話しします。
そもそも「気血」って何?
東洋医学では、身体の働きを考えるうえで、**「気」と「血」**を大切にしています。
まず、それぞれについて簡単に説明します。
「気」は、身体の働きを支えるもの
東洋医学では、気を生命活動を支えるもののひとつとして捉えています。
身体を動かすこと
身体を温めること
身体の中のさまざまな働きを保つことなど
生命活動に関わる働きを「気」という考え方で捉えます。
例えば、疲れて元気が出ないとき。
東洋医学では、気が不足している可能性を考えることがあります。
また、
気持ちが張り詰めていたり、
身体に力が入り続けていたりするときには、
気の巡りが滞っている可能性を考えることもあります。
もちろん、疲れているから必ず気が不足している、というわけではありません。
実際には、ほかの症状や身体の状態も合わせて考えていきます。
「血」は、身体を養うもの
東洋医学でいう「血」は、身体の各部を養い、潤すものとして考えられています。
現代医学でいう血液と共通する部分はありますが、
東洋医学の「血」が、現代医学でいう血液と完全に同じ意味というわけではありません。
東洋医学では、血が身体を十分に養えているか、必要なところに行き渡っているか、といった視点からも身体の状態を捉えます。
例えば、東洋医学では、血が不足している状態を考えるときに、
顔色や皮膚の乾燥
めまい
目の疲れ
眠りの状態など
さまざまな情報を参考にします。
ただし、これらの症状だけで血の不足と決めるわけではありません。
気と血は、それぞれ異なる働きを持ちながら、お互いに関係し合っている。
これが、東洋医学の考え方のひとつです。
気と血は、お互いに関係している
ここが、気血の巡りを理解するうえで大切なところです。
東洋医学では、気には血を巡らせる働きがあると考えます。
また、血は身体を養うだけでなく、気が働くための土台にもなると捉えます。
つまり、気と血は別々に働いているのではなく、互いに支え合っているのです。
例えば、東洋医学では、気の働きが不足すると、血を巡らせる働きにも影響すると考えます。
一方で、血が不足して身体を十分に養えなくなると、気の働きにも影響することがあると考えます。
そのため、気だけをみればよいわけでも、血だけをみればよいわけでもありません。
気と血の両方を考えながら、身体全体の状態を捉えていく。
これが、東洋医学で「気血」という言葉を使う理由のひとつです。
「巡りが悪い」とは、どういうこと?
では、気血の巡りが悪いとは、どのような状態なのでしょうか。
東洋医学では、気血が十分にあるかどうかだけでなく、必要なところに行き渡り、うまく働いているかということも大切にしています。
ここで、少しイメージしてみてください。
身体をひとつの街に例えると、気血は、街のさまざまな場所で生活や活動を支えるもののように考えられます。
必要なものが十分にあっても、それが必要な場所に届かなかったり、うまく働かなかったりすれば、全体としては不都合が生じます。
東洋医学でも、気血の量だけでなく、その働きや巡りを合わせて考えます。
例えば、身体が冷えている、肩や首に力が入り続けている、疲れが抜けない、気持ちが落ち着かない。
こうした状態についても、東洋医学では気血の巡りという視点から捉えることがあります。
ただし、気血の巡りが悪いという言葉は、現代医学でいう血流の低下と同じ意味ではありません。
血流には血流の、東洋医学の気血には気血の、それぞれの捉え方があります。
この違いを知っておくと、「気血の巡りを整える」という言葉も理解しやすくなると思います。
気が不足している場合と、気が滞っている場合では違う
もうひとつ知っておきたいのが、気の不足と気の滞りは同じではない、ということです。
東洋医学では、気の状態をいくつかの視点から考えます。
例えば、気が不足している状態は「気虚(ききょ)」、気の巡りが滞っている状態は「気滞(きたい)」と呼ばれます。
気虚(ききょ)
気虚は、簡単にいうと、気が不足していると考えられる状態です。
東洋医学では、
疲れやすい
身体に力が入らない
食欲が落ちる
活動するとすぐに疲れるなどの状態が
気虚を考える手がかりになることがあります。
この場合は、気を補うという考え方が施術の方向性につながります。
気滞(きたい)
気滞は、気の巡りが滞っていると考えられる状態です。
例えば、
気分がすっきりしない
胸やお腹が張る
ため息が多い
緊張すると身体がこわばるなどの状態が
気滞を考える手がかりになることがあります。
この場合は、気の巡りを整えるという考え方が施術の方向性につながります。
もちろん、実際のお身体は、気虚か気滞かのどちらか一つにきれいに分けられるとは限りません。
気の不足と巡りの滞りが同時にみられることもありますし、血や五臓六腑の状態など、ほかの要素も関係していると考えることがあります。
だからこそ、ひとつの症状だけで判断せず、身体全体をみていくことが必要になるのです。
気血が巡る道として考えられている「経絡」
ここで、経絡治療の「経絡」についてもお話しします。
東洋医学では、気血が巡る通り道を「経絡」として捉えています。
経絡は、身体のさまざまな部分と関係しており、臓腑や手足、体幹などをつなぐものとして考えられています。
そのため、身体は部分ごとに独立しているのではなく、それぞれが関係し合っていると捉えるのです。
例えば、肩がこっているとき。
肩の筋肉や、その周辺の状態を確認することもあります。
一方で、経絡治療では、肩だけでなく、脈やお腹、手足の経絡の状態なども確認します。
そして、身体全体の状態を考えながら、どの経絡に働きかける必要があるのかを判断していきます。
東洋医学では、症状が出ている場所から離れた経穴を使うこともあります。
「肩がつらいのに、どうして手や足に鍼をするの?」
と不思議に感じるかもしれません。
これは、経絡のつながりを利用して、症状のある場所から離れたところからもアプローチできると考えるためです。
もちろん、症状のある場所に鍼やお灸をすることもあります。
どこに鍼をするかは、症状の場所だけではなく、その日の身体全体の状態をみて考えていきます。
経絡治療では、気血の巡りをどう整えるの?
しんしん調和鍼灸院で行っている経絡治療では、毎回のお身体の状態を確認しながら施術を行っています。
その際に大切にしているのが、本治法と標治法です。
本治法:身体全体の状態を整える
本治法では、四診法を用いてお身体の状態を確認し、証(あかし)を立てます。
四診法とは、望診・聞診・問診・切診という四つの方法で、身体の状態を把握していくものです。
お話を伺うだけでなく、顔色や身体の様子、声や呼吸、脈、お腹、経絡に触れたときの状態など、さまざまな情報を合わせて考えます。
そして、バランスがくずれている経絡に関係する経穴へ鍼をして、気血の巡りを整えていきます。
ここで大切なのは、痛みやコリがある場所だけをみているわけではないということです。
例えば肩こりがあっても、その背景に疲労や睡眠の問題、胃腸の調子、冷えなどが関係していると考えられる場合があります。
そうした身体全体の状態も含めて考えるのが、本治法です。
東洋医学では、このように気血の巡りや経絡の状態を整えることを通して、生命力や身体が本来持っている働きを支えることを目指します。
標治法:今気になっている症状に対応する
一方、標治法では、今気になっている痛みやコリ、不調などに対して、鍼やお灸でアプローチしていきます。
例えば、肩こりがつらい場合には、肩や首の状態を確認しながら施術を行います。
ただし、標治法でも、必ず症状のある場所だけに鍼をするとは限りません。
経絡のつながりや身体の反応をみながら、必要に応じて離れた場所の経穴を使うこともあります。
このように、本治法で身体全体の状態を整えながら、標治法で今気になっている症状にも対応していきます。
身体全体と、今つらいところ。その両方をみていくことが、しんしん調和鍼灸院で行っている経絡治療の特徴です。
同じ肩こりでも、施術する場所が変わることがあります
例えば、同じように肩こりを感じている方でも、身体の状態は一人ひとり違います。
疲れがたまっている方もいれば、睡眠が十分に取れていない方もいます。
冷えを感じている方もいれば、気持ちが張り詰めて、身体に力が入り続けている方もいます。
症状としては同じ「肩こり」でも、東洋医学では、その背景にある身体の状態を分けて考えることがあります。
そのため、毎回同じ場所に鍼をするとは限りません。
前回と同じ経穴を使うこともあれば、その日の状態に合わせて違う経穴を選ぶこともあります。
施術後には、脈や経絡などにどのような変化があったかを確認し、必要に応じて次の施術を考えていきます。
気血の巡りを整えるというのは、決まった場所に鍼をすればよいというものではありません。
その日の身体をみて、何を整える必要があるのかを考え、必要なところへ働きかけていく。
経絡治療では、こうした考え方を大切にしています。
気血の巡りを整えることは、身体全体をみること
「気血の巡りを整える」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
でも、ここまでの話をまとめると、
気は、身体の働きを支えるもの。
血は、身体を養うもの。
そして、気と血はお互いに関係し合いながら、経絡を通って巡ると考えられている。
東洋医学では、その気血の状態や巡りを、脈やお腹、経絡、症状などから捉えていきます。
だから、肩がつらいから肩だけ、疲れているから疲労だけ、という見方ではなく、身体全体の状態をみることが大切になります。
しんしん調和鍼灸院では、経絡治療を通して、目に見えている症状だけでなく、気血や経絡など、東洋医学で捉える「目にはみえないけれど働きのあるもの」にも目を向けています。
「いつも同じところがつらくなる」
「休んでも疲れが抜けない」
「病院では大きな異常がないと言われたけれど、調子がすっきりしない」
そんなとき、症状のある場所だけでなく、身体全体の状態を見直してみることも一つの方法です。
経絡治療では、毎回のお身体の状態を確認し、そのときに必要な施術を考えていきます。
無理に施術をおすすめすることはありませんので、「自分の身体全体の状態をみながら鍼灸を受けてみたい」と感じる方は、お気軽にご相談ください。
今日より快適な明日になるように、お身体を整えていきます。
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