鍼灸をしたあと、身体の中では何が起きているの?
― 気血の巡りと身体の変化、気づくタイミングに個人差がある理由 ―

鍼灸を受けると、身体にはどんな変化が起こるの?
鍼やお灸を受けたあと、身体が温かくなったり、肩や首の力が抜けたりした経験はありませんか?
施術後に、肌の色が明るく見えたり、艶が出たりすることもあります。
ほかにも、皮膚の赤みが落ち着く、触れたときの弾力が変わる、表面のざらつきが和らぐなど、身体の表面に変化が現れることがあります。
また、施術直後にはあまり変化を感じなかったのに、帰宅してから身体が軽くなったことに気づいたり、翌朝起きたときにいつもより動きやすく感じたりする方もいます。
反対に、施術を受けた直後に身体の変化を感じても、その後しばらくすると元の状態に戻ったように感じることもあります。
このように、鍼灸を受けたあとの変化は、人によってさまざまです。
では、鍼やお灸をすると、身体の中では何が起きているのでしょうか。
東洋医学では、身体の状態を考えるうえで、「気血の巡り」と「身体全体のバランス」を大切にしています。
今回は、施術後に現れることがある身体の変化と、その変化に気づくタイミングに個人差がある理由についてお話しします。
東洋医学では「気」と「血」の働きから身体を考えます
東洋医学では、身体の状態を考えるときに「気(き)」と「血(けつ)」という概念を大切にしています。
気は、身体を動かしたり、温めたり、さまざまな働きを支えたりするものとして捉えられています。
血は、身体の各部分に栄養を届け、潤いを与えるものとして考えられています。
ここでいう気や血は、現代医学でいう特定の物質や血液そのものと完全に同じ意味ではありません。
東洋医学独自の考え方から、身体の働きや状態を捉えるための概念です。
東洋医学では、気と血は互いに関係し合いながら、身体の各部分を支えていると考えます。
たとえば、
気には血を巡らせる働きがあるとされ、
血には身体を養い、潤す働きがあると考えられています。
そのため、気の働きが不足しているのか、気の巡りが滞っているのか、血が身体を十分に養えていない状態なのかによって、身体の捉え方も変わってきます。
同じ「疲れやすい」という状態でも、東洋医学では、その背景にある身体の状態は一人ひとり違うと考えるのです。
鍼やお灸を使う経絡治療では、こうした気血の状態を考えながら、経絡やツボを選んで施術します。
そして、施術前後の脈や身体の反応を確認し、どのような変化が現れたのかを見ていきます。
鍼やお灸のあと、肌に変化が現れるのはなぜ?
東洋医学では、気血が身体の各部分を養い、潤し、温める働きを支えていると考えます。
そのため、皮膚の色や艶、温かさ、張りなども、身体の状態を考えるための手がかりになります。
たとえば、施術前には皮膚が冷たく感じられたり、張りが乏しく感じられたりすることがあります。
施術後に同じ場所を確認すると、温かさが増していたり、皮膚の弾力が変化していたりすることがあります。
肌の色が明るく見えたり、艶が出たように感じられたりすることもあります。
現代医学的には、鍼やお灸による刺激は、神経系の反応や局所の血流などに影響することがあります。
ただし、すべての変化が同じ仕組みで起こるわけではなく、肌の見た目や触れた感触が変わる理由も一つではありません。
東洋医学では、こうした変化を気血の巡りや身体の状態を考える手がかりとして捉えます。
ここで大切なのは、肌に変化が現れたからといって、それだけで身体の内側の状態がすべて分かるわけではないということです。
皮膚の状態には、室温や湿度、乾燥、刺激なども関係します。
そのため、皮膚だけを見るのではなく、脈やお腹、経絡に現れている反応なども合わせて確認していきます。
では、実際にはどのような変化が現れることがあるのでしょうか。
① 肌の色が明るく見えたり、艶が出たりする
鍼灸の施術後に、顔や身体の肌が明るく見えたり、艶が出てきたように感じられたりすることがあります。
東洋医学では、血には身体の各部分を養い、潤す働きがあると考えられています。
そのため、肌の色や艶、潤いなども、血の状態を考える際の手がかりのひとつになります。
たとえば、身体を十分に養う働きが不足していると考えられる状態では、肌の色が冴えなかったり、乾燥して艶が乏しくなったりすることがあると捉えます。
施術後に肌の色が明るく見えたり、艶が増したように感じられたりした場合には、皮膚の温度や血流の変化などが関係している可能性もあります。
ただし、一度の施術で肌質そのものが変わった、あるいは血の不足が解消したと断定できるわけではありません。
こうした変化も、身体の状態を知るための情報のひとつとして確認しています。
② 赤みが落ち着いたり、皮膚の色が変化したりする
皮膚に赤みがあるとき、施術後に赤みが目立ちにくくなることがあります。
一方で、鍼をした部分に一時的な赤みが出ることもあります。
このように、皮膚の色は施術によって一方向に変化するわけではありません。
東洋医学では、身体の表面に現れる赤みや色の変化も、気血の状態を考える際の手がかりのひとつとして捉えます。
たとえば、東洋医学では、身体に熱がこもっている状態や、気血の巡りが滞っている状態などを考えることがあります。
ただし、赤みがあるから必ず熱がこもっている、赤みが引いたから気血の巡りが整った、という単純な判断はできません。
皮膚の赤みには、刺激や温度、皮膚そのものの状態など、さまざまな要因が関係するためです。
経絡治療では、皮膚の色だけでなく、脈やお腹、経絡の反応、お話から分かる体調などを合わせて、お身体の状態を考えていきます。
③ 身体が温かくなる
鍼灸を受けたあと、「身体が温かくなった」「手足がぽかぽかする」と感じる方がいます。
お灸による温熱刺激はもちろん、鍼の施術後に温かさを感じることもあります。
東洋医学では、気には身体を温める働きがあると考えられています。
そのため、身体が冷えているときには、温める働きが不足していないか、気血の巡りが滞っていないかなどを考えます。
また、冷えを感じる場所だけに注目するのではなく、全身の状態も確認します。
たとえば、手足が冷えていても、身体のほかの部分は温かいことがあります。反対に、身体の表面は温かく感じても、本人は冷えを強く感じていることもあります。
東洋医学では、こうした違いも踏まえながら、身体の状態を捉えていきます。
施術後に温かさが出てきた場合も、それだけで身体全体の状態が整ったと判断するのではなく、脈や皮膚の状態など、ほかの反応と合わせて確認します。
④ 皮膚の弾力や柔らかさが変わる
皮膚に触れたとき、張りが乏しく、ふにゃっとした感触があることがあります。
反対に、皮膚が硬く張っていて、押しても動きにくいように感じられる場合もあります。
施術後に触れてみると、施術前よりも弾力が感じられたり、柔らかさが変化したりすることがあります。
東洋医学では、皮膚の状態も身体全体の状態を知るための情報のひとつとして捉えます。
気や血が身体の各部分を養う働きに注目し、皮膚の張りや潤い、触れたときの感触などを確認します。
もちろん、皮膚が柔らかければよい、硬ければ悪い、と決めつけるわけではありません。
皮膚の感触には、もともとの体質や身体の部位、温度、組織の緊張なども関係します。
その方の施術前の状態を確認し、施術後にどのような変化があったのかを見ていきます。
⑤ 皮膚表面のざらつきが和らぐ
皮膚に触れたとき、表面がざらざらしていたり、部分的に乾燥していたりすることがあります。
施術後に触れてみると、ざらつきが和らいだように感じられることもあります。
東洋医学では、血には身体を養い、潤す働きがあると考えます。そのため、皮膚の乾燥や潤いの状態も、身体を考えるうえでの手がかりになります。
ただし、皮膚のざらつきには、乾燥や角質の状態、皮膚疾患など、さまざまな要因があります。
鍼灸を受けたあとに感触が変わったとしても、それだけで皮膚の状態が根本的に変化したとはいえません。
経絡治療では、皮膚の感触だけで判断せず、ほかの身体の反応も確認します。
また、皮膚に赤みやかゆみ、痛みなどがある場合には、鍼灸だけで対応しようとせず、必要に応じて医療機関で相談することも大切です。
身体の変化は、施術直後に現れるとは限りません
ここまで、鍼灸のあとに現れることがある肌や皮膚の変化を紹介しました。
では、こうした変化は、いつ頃から感じられるのでしょうか。
施術直後に変化を感じる方もいれば、数時間後や翌日になってから気づく方もいます。
施術直後にはあまり変化を感じなかったのに、帰宅してから身体が軽くなったことに気づいたり、翌朝、いつもより動きやすいと感じたりすることもあります。
一方、施術直後には楽になったように感じても、時間が経つと元の状態に戻ったように感じる場合もあります。
施術直後に変化が分からなかったからといって、身体に何の変化も起きていないと決めつけることはできません。
ただし、時間が経てば必ず変化が現れるというわけでもありません。
変化を感じるタイミングや、その変化がどのくらい続くかは、症状や身体の状態、施術内容などによって異なります。
そのため、施術直後の感覚だけで判断せず、帰宅後や翌日、その後の日常生活の中で、身体の状態がどうだったかを振り返ってみることも大切です。
症状を抱えてきた期間によっても、変化の現れ方は違います
身体の変化を考えるうえで、もうひとつ大切なことがあります。
それは、気になっている症状を、これまでどのくらいの期間抱えてきたかということです。
たとえば、
昨日から急に首が動かしにくくなった方と、
何年も肩こりに悩んできた方では、
身体の状態も、これまでの経過も異なります。
東洋医学の視点からみても、症状が現れた時期や経過、身体全体の状態などを踏まえて考える必要があります。
比較的最近現れた症状では、早い段階で変化を感じることもあります。
一方、
長い期間にわたって不調を抱えてきた場合には、身体の状態を見ながら、時間をかけて変化を確認していくこともあります。
ただし、
症状を抱えてきた期間が短ければ必ず早く変化する、
長ければ必ず時間がかかる、
というわけではありません。
症状の種類や程度、体質、生活環境なども関係するためです。
長年続いていた症状でも早い段階で変化を感じる方はいますし、
最近現れた症状でも、すぐには変化を感じないことがあります。
大切なのは、症状の期間だけで判断せず、その方のお身体の状態を確認しながら考えていくことです。
日々の生活も、身体の変化に関係します
鍼灸を受けることだけが、身体の状態を左右するわけではありません。
私たちの身体は、毎日の生活からも影響を受けています。
たとえば、
十分な睡眠が取れているか、
食事をきちんと取れているか、
身体を動かす習慣があるか、
疲れたときに休めているか。
こうした日常生活の積み重ねも、身体の状態に関係します。
反対に、
仕事や家庭の事情で休む時間が取れなかったり、
睡眠不足が続いていたり、
強いストレスを受け続けていたりすると、
身体に負担がかかりやすくなります。
せっかく施術を受けても、その後も大きな負担が続いていれば、身体の変化を感じにくかったり、楽になった状態が長く続かなかったりすることも考えられます。
もちろん、生活習慣をすべて変える必要はありませんし、ストレスを完全になくすことも簡単ではありません。
まずは、
今の生活の中で睡眠が不足していないか、
食事を抜くことが多くないか、
疲れをため込んでいないかなど、
できる範囲で振り返ってみることも大切です。
東洋医学では、生まれ持った身体の性質や、その後の生活によって培われてきた身体の状態なども踏まえながら、一人ひとりのお身体を考えます。
同じ施術を受けても、身体の反応や変化の現れ方が違うのは、こうした背景も一人ひとり異なるためです。
生まれ持った身体の性質も、人それぞれです
同じような生活をしていても、疲れやすい方もいれば、比較的疲れを感じにくい方もいます。
睡眠不足が続くとすぐに体調を崩す方もいれば、多少の無理が続いても、すぐには不調を感じない方もいます。
生まれ持った身体の性質や体質には個人差があり、その後の生活習慣や経験も、現在の身体の状態に関係します。
東洋医学では、生まれ持ったものを「先天の精」、食事や呼吸など、日々の生活から得られるものを「後天の精」という考え方で説明することがあります。
これは、身体の働きを東洋医学の視点から捉えるための考え方です。
たとえば、同じ年齢の方でも、食事の内容や活動量、睡眠、仕事で受ける負担などは異なります。
これまでどのような生活を送り、どのような負担を重ねてきたのかによっても、現在のお身体の状態は違ってきます。
そのため、誰にでも同じ方法を当てはめるのではなく、その方の状態に合わせて施術を考えることが大切になります。
どうして、何回施術を受ければ変化するとは言い切れないの?
ここまでお読みいただくと、鍼灸を受けたあとの変化には、さまざまな要因が関係していることがお分かりいただけると思います。
症状を抱えてきた期間、
現在の身体の状態、
体質、
睡眠や食事、
活動量、
ストレスなど。
こうした条件は、一人ひとり異なります。
そのため、初めて施術を受ける方に「3回受ければ変化を感じます」「5回で楽になります」と、回数だけでお伝えすることは難しいのです。
一度の施術で変化を感じる方もいれば、何度か施術を受ける中で、少しずつ身体の変化に気づく方もいます。
また、最初は肩こりの軽さに気づき、その後、以前より眠りやすくなったことや、疲れが残りにくくなったことに気づくなど、変化を感じる部分が変わっていくこともあります。
反対に、施術を重ねても期待した変化が得られない場合には、その経過を確認し、施術の方法や今後の対応について考える必要があります。
その方のお身体にどのような変化が現れているのかを確認しながら、今後の施術を考えていくことが大切です。
しんしん調和鍼灸院でも、施術前にお話を伺い、脈やお腹などの反応を確認しながら、そのときのお身体の状態に合わせて施術を進めています。
身体がよい方向に変化していても、気づかないことがあります
もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。
それは、私たちは、痛みや不快感には気づきやすい一方で、身体が楽になっていることには気づきにくい場合がある、ということです。
たとえば、肩がこって痛いときには、「肩がつらい」「首が回しにくい」と、すぐに気づきますよね。
痛みや不快感は、身体に何か問題が起きている可能性を知らせるサインです。身を守るために、注意を向けやすい感覚だと考えられます。
一方で、身体が楽なときはどうでしょうか。
朝、目覚めたときに身体が軽くても、いつもと同じように起きて、着替えて、仕事に出かける。
階段を以前より楽に上がれるようになっていても、毎日繰り返している動作なので、特に意識しないことがあります。
以前は夕方になるとぐったりしていたのに、最近は帰宅後も少し余裕がある。
夜中に何度も目が覚めていたのに、気づけば朝まで眠れる日が増えている。
こうした変化も、日常生活の中では見過ごしてしまうことがあります。
もちろん、こうした変化が必ず鍼灸によって起こるという意味ではありません。
睡眠や生活環境など、さまざまな要因が関係します。
ただ、つらさが減ったことだけでなく、以前より楽にできるようになったことにも目を向けてみると、自分では気づいていなかった変化を発見できるかもしれません。
施術を受けたあとは、こんなことも振り返ってみてください
鍼灸を受けたあと、身体の変化を確認するために、特別なことをする必要はありません。
いつもの生活の中で、少しだけ身体の様子を振り返ってみてください。
たとえば、次のようなことです。
- 朝起きたとき、以前より身体が軽く感じられるか
- 肩や首を動かしたとき、動かしやすさに変化があるか
- 仕事や家事のあと、疲れ方が以前と違うか
- 夜、眠りにつくまでの時間や、途中で目が覚める回数に変化があるか
- 手足の冷えや、身体の温かさに変化があるか
- 気持ちに余裕がある時間が増えているか
もちろん、すべてを記録する必要はありません。
施術前に特につらかったことをひとつ思い出しておき、次の施術までの間にどうだったかを振り返るだけでも十分です。
「まだ肩こりはあるけれど、以前ほど気にならなくなった」
「疲れはするけれど、翌朝まで引きずることが減った気がする」
そんな小さな気づきも、身体の状態を知るための情報になります。
一方で、変化を感じないことや、症状が続いていることを、無理に前向きに捉える必要はありません。
つらさが続いているなら、そのことも大切な情報です。
施術者に伝えていただくことで、今後の施術や対応を考える手がかりになります。
しんしん調和鍼灸院では、施術の反応を確認しながら進めます
しんしん調和鍼灸院では、脉診流の経絡治療を専門に行っています。
経絡治療では、
全身の状態を整えることを目的とした「本治法(ほんちほう)」と、
肩こりや頭痛など、現在気になっている症状に対応する「標治法(ひょうちほう)」を、
毎回の施術で行っています。
施術では、症状のある場所だけでなく、脈やお腹、手足の経絡などに現れている反応を確認し、そのときのお身体の状態を東洋医学の視点から捉えていきます。
鍼をしたあとも、脈や身体に触れたときの反応などを確認しながら、施術を進めます。
鍼は、必要以上に深く刺したり、強い刺激を加えたりすることを基本としていません。
鍼を通じて伝わる感覚を確かめながら、お身体の反応に合わせて丁寧に施術しています。
施術後の変化は、一人ひとり異なります。
すぐに身体の軽さを感じる方もいれば、時間が経ってから変化に気づく方もいます。
また、一度の施術ですぐに大きな変化を感じるとは限りません。
だからこそ、決められた回数だけで判断するのではなく、施術前後の反応や、日常生活での身体の変化を確認しながら、その方に合った施術を考えていきたいと思っています。
鍼灸を受けたことがない方にとっては、「本当に自分にも変化があるのだろうか」と不安に感じることもあると思います。
その場ですぐに変化を感じることだけが、身体の状態を知る手がかりではありません。
今の身体がどのような状態にあるのかを確認し、施術を受けたあとにどのような変化があったのかを、一緒に見ていくことも大切だと考えています。
無理に施術をおすすめすることはありませんので、
「自分の身体全体の状態をみながら鍼灸を受けてみたい」と感じる方は、お気軽にご相談ください。
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