身体の左右で、感じ方が違うのはなぜ?

左右の違いから見えてくる、東洋医学の身体の捉え方と脉診流経絡治療

右の肩はこっているのに、左はそれほどでもない。
右足は冷えるのに、左足は気にならない。
同じツボを押しても、右と左では痛みや響き方が違う。

このように、身体の左右で感じ方が違うことはありませんか?


私たちは、自分の身体を左右対称に捉えがちですが、実際には左右で筋肉の使い方や関節の動き、身体の反応などが異なります。

東洋医学では、こうした左右の違いを、単に片側に負担がかかっているというだけでなく、身体全体の状態を知るための手がかりとして捉えます。

しんしん調和鍼灸院で行っている「脉診流経絡治療」には、こうした身体の左右差に関わる特徴的な施術方法があります。

それが「片方刺し」です。

なぜ左右両方に鍼をするのではなく、片方だけに鍼をするのでしょうか。

その理由を、東洋医学の考え方から順番にお伝えします。

① 人の身体は、もともと左右対称ではない

顔を鏡で見てみると、目の高さや眉の形、口角の位置など、左右で少しずつ違いがあることに気づくと思います。

身体も同じです。


利き手や利き足、普段の姿勢、仕事や家事での動作などによって、左右の筋肉の使い方には違いが生まれます。

いつも同じ側で荷物を持つ、片足に体重をかけて立つ、同じ方向に身体をひねるといった習慣も、左右差につながります。

その結果、片側だけ筋肉が張る、関節の動きが硬くなる、押したときの痛みが違うといったことが起こります。

これは、身体の構造や日常生活から生じる左右差です。

一方、東洋医学では、身体を筋肉や関節などの部分だけで捉えるのではなく、気血が巡る経絡や、五臓六腑の働きを含めた全身のつながりとして考えます。


そのため、右と左で現れている反応の違いも、身体全体のバランスを考えるための大切な情報になります。

② 東洋医学では、左右を「陰陽」の関係から捉える

東洋医学の基本的な考え方に「陰陽(いんよう)」があります。

以前、他のブログで体調と陰陽について載せました。
(同じ生活をしているのに、体調に波があるのはなぜ?)

陰陽とは、自然界や身体にある、互いに対になる性質を表したものです。

たとえば、

  • 昼と夜

  • 動と静

  • 温かさと冷たさ

  • 活動と休息

このように、異なる性質を陰と陽に分けて捉えます。

身体にも陰陽の考え方があり、古典的には身体の左右について、左を陽、右を陰とする見方があります。

ただし、これは左右のどちらかが良い、あるいは悪いという意味ではありません。

陰と陽は、どちらか一方だけで成り立つものではなく、互いに関係しながら身体の働きを保っています。


また、東洋医学では、身体の左右だけでなく、上下・内外・表裏など、さまざまな関係から陰陽を捉えます。

そのため、右側に症状があるから陰の問題、左側に症状があるから陽の問題、と単純に決めることはできません。

左右のどちらにどのような反応が現れているのかを確認し、身体全体の状態と合わせて考える必要があります。

③ 経絡は左右それぞれにあり、全身でつながっている

東洋医学では、気や血が巡る通り道を「経絡(けいらく)」と呼びます。

経絡には、身体の表面を通るものだけでなく、内側の臓腑と関係するものもあり、全身をつなぐ仕組みとして考えられています。

たとえば、手や足にはそれぞれ経絡が通っています。

同じ名前の経絡であっても、右側と左側にそれぞれ存在します。

つまり、右の足にある経穴(ツボ)と左の足にある経穴は、同じ経絡上の対応する場所であっても、必ずしも同じ状態とは限りません。


「実際に触れてみると、片側には力がなく、もう片側には突っ張りがある。」

「片側は凹んでいるように感じ、もう片側にはざらつきがある。」

このように、左右で異なる反応が見つかることがあります。


経絡治療では、こうした反応を「切経(せっけい)」によって確認します。

切経とは、経絡や経穴に触れながら、皮膚の状態や筋肉の張り、硬さ、凹み、温度などを確認する方法です。

教科書に記載されているツボの位置だけを目安にするのではなく、その日の身体に現れている反応を指先で探していきます。

同じツボの名前がついていても、実際に施術する場所は人によって、またその日の身体の状態によって変わることがあります。

④ 脉診流経絡治療では、なぜ脈やお腹を確認するの?

鍼灸には、さまざまな流派や施術方法があります。

筋肉の硬さや関節の動きなどを確認して、症状が出ている部分に鍼をする方法もあれば、症状に応じてツボを選び、施術する方法もあります。

一方、東洋医学に基づく経絡治療では、今現れている症状だけでなく、その人の身体全体がどのような状態にあるのかを確認して施術方針を考えます。

しんしん調和鍼灸院で行っているのは、東洋はり医学会で学ぶ「脉診流経絡治療」です。


脉診流経絡治療では、四診法を用いて身体の状態を確認します。

  • 望診(ぼうしん):顔色や姿勢、身体全体の様子を目で確認する

  • 聞診(ぶんしん):声や呼吸、身体から聞こえる音やにおいなどを確認する

  • 問診(もんしん):症状や日常生活、体調の変化などを伺う

  • 切診(せっしん):脈やお腹、経絡や経穴に触れて状態を確認する


この中でも特に重要なのが
「腹診(ふくしん)」と「脉診(みゃくしん)」です。


腹診では、
お腹の硬さ、冷え、張りなどを優しく触って、身体全体の健康状態や体質(五臓六腑のバランス)を診ていきます。

病院の診察のように、お腹の病気そのものを探すのではなく、お腹を「身体の鏡」として捉え、気の過不足や巡りの悪さを見極めます。

脈診は、手首の脈に触れ、脈の強さや深さ、速さ、張りなどを確認し、身体の状態を捉えていきます。

病院の診察のように、心臓の鼓動や病気そのものを探すのではなく、脈を「全身の気の縮図」として捉え、気血(きけつ)の過不足や巡りの悪さを見極めます。


ほかの四診法で得られた情報も合わせて、その人の身体の状態を東洋医学の考え方で整理します。


その結果、どの経絡にどのような調整が必要なのかを考え、「証(あかし・しょう)」を立てます。

証とは、東洋医学において、その人の身体の状態を総合的に捉えたものです。

同じ肩こりを訴えていても、証が異なれば施術する経絡や経穴も変わります。

症状の名前だけで施術する場所を決めるのではなく、身体全体を確認して施術方針を組み立てていくのです。

⑤ 片方だけに鍼をする「片方刺し」とは?

ここで、脉診流経絡治療の特徴のひとつである「片方刺し」についてお話しします。

片方刺しとは、本治法において、左右両方に同じように鍼をするのではなく、身体の状態を確認したうえで、左右どちらか一方を選んで鍼をする方法です。

「右と左の両方に同じように鍼をした方が、バランスが整うのでは?」

そう思われる方もいるかもしれません。


しかし、東洋医学では、左右が必ず同じ状態であるとは考えません。

身体の左右には、それぞれ異なる反応が現れています。

そのため、両側に同じ刺激を加えることが、必ずしも適切とは限らないのです。


脉診流経絡治療では、左右の経絡を切経して反応を確認し、脈診などで得られた情報と合わせて、どちら側に施術するかを判断します。

ここで大切なのは、単純に症状がある側を選ぶわけではないということです。


たとえば、右肩に痛みがあっても、必ず右側に鍼をするとは限りません。

症状のある側だけでなく、反対側の経絡にも触れて状態を確認します。

左右のどちらに施術することが、その人の身体全体のバランスを整えるうえで適切なのかを考えて選穴します。

また、片方刺しには、相剋調整(そうこくちょうせい)という五行の関係を用いた技術もあります。

⑥ 五行の「相剋関係」を利用して、身体のバランスを調整する

東洋医学には、自然界や身体の働きを「木・火・土・金・水」の五つに分類する「五行(ごぎょう)」という考え方があります。


五行には、互いを生み育てる「相生(そうせい)」と、

互いを抑制し調整する「相剋(そうこく)」という関係があります。


相剋は、ある要素が別の要素を適度に抑え、全体のバランスを保つ関係です。


たとえば、五行の関係は次のようにつながっています。

  • 木は土を剋する

  • 土は水を剋する

  • 水は火を剋する

  • 火は金を剋する

  • 金は木を剋する

ここでいう「剋する」は、単に悪い影響を与えるという意味ではありません。

互いの働きが強くなりすぎないように調整する関係として捉えます。


脉診流経絡治療の本治法では、この五行の相生・相剋の関係も用いながら、経絡のバランスを調整します。

片方刺しで行う相剋調整も、その技術のひとつです。

左右の経絡の状態を確認し、五行の関係を踏まえて、どの経絡にどのような調整を行うかを考えます。

ただし、五行の関係だけで機械的に施術する側を決めるわけではありません。

実際の身体に現れている反応を確認しながら、施術する経穴を選んでいきます。

⑦ 右と左、どちらに鍼をするかは決まっているの?

片方刺しについて、

「女性は右、男性は左」
「急性症状は症状がある側、慢性症状は症状がない側」

といった考え方があります。


しかし、こうした考え方だけで施術する側を決めるわけではありません。

性別や症状の経過は、身体の状態を考えるうえでの情報のひとつにはなりますが、すべての方に当てはまる決まりではないからです。


たとえば、同じ右肩の痛みでも、身体全体の状態や左右の経絡の反応は一人ひとり異なります。

また、同じ方であっても、来院した日によって身体の状態が変化していることがあります。


そのため、毎回同じ側に鍼をするとは限りません。

左右それぞれの経絡を確認し、その日の身体の反応をもとに施術する側と経穴を選びます。

「右だから」「左だから」と決めつけず、実際に身体に触れて確認することを大切にしています。

⑧ 一本の鍼をした後にも、脈や身体の変化を確認する

脉診流経絡治療のもうひとつの特徴は、鍼をした後の身体の反応を確認しながら施術を進めることです。

施術前に脈やお腹、経絡の状態を確認し、証に基づいて経穴を選びます。

そして、一本の鍼をした後にも、脈やお腹、周囲の経絡の状態を確認します。

鍼をする前と後では、脈の状態や触れたときの反応が変化することがあります。

その変化を確かめながら、次の鍼が必要か、どの経穴を選ぶかを考えていきます。


つまり、最初に決めた施術を最後まで同じように行うのではなく、身体の反応を確認しながら、その場で細やかに施術を組み立てていくのです。


しんしん調和鍼灸院では、鍼を刺入してから抜くまで、鍼に添えた手を離さず、鍼先や身体の反応を感じ取りながら施術しています。

深く刺したり、強い刺激を加えたりすることを目的としているわけではありません。

身体が受け入れる反応を感じ取りながら、必要な刺激を丁寧に加えていきます。

少ない鍼数であっても、一本ごとの反応を確認しながら施術を進めることが、脉診流経絡治療の大切な特徴です。

左右の違いは、身体全体を知るための手がかり

右と左で感じ方が違うとき、私たちはつい、症状がある側だけに注目してしまいます。

しかし、東洋医学では、身体を部分ごとに切り離して考えるのではなく、経絡や五臓六腑の働きを含めた全身のつながりの中で捉えます。

脉診流経絡治療では、脈やお腹、経絡の反応を確認しながら、その日の身体の状態に合わせて施術する側や経穴を選んでいきます。

片方刺しも、単に片側だけに鍼をするということではありません。

左右の違いを確認し、身体全体のバランスを考えたうえで、必要な側に施術するという考え方に基づいています。

しんしん調和鍼灸院では、本治法で身体全体の経絡のバランスを整えながら、標治法で現在感じている痛みやこり、違和感にも対応しています。

「右と左で身体の感じ方が違う」
「片側だけにこりや冷えが出やすい」
「症状がある場所だけでなく、身体全体の状態をみてほしい」と感じる方は、

無理に施術をおすすめすることはありませんので、お気軽にご相談ください。

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