何もしていない時間も、身体は休めているの?
横になっていることと、心身が休まっていることは同じではありません

「今日は一日、家でゆっくり過ごしていたのに、なんだか身体が重い」
「休日は横になっていることが多いのに、疲れが残っている」
このように感じることはありませんか?
何もせずに過ごす時間は、身体を休めるために必要です。
ただ、動かずにじっとしていることと、身体が十分に休まっていることは、必ずしも同じではありません。
長い時間同じ姿勢で過ごしていると、筋肉がこわばったり、血液やリンパの流れが滞りやすくなったりすることがあります。
東洋医学にも、身体を長時間使い続けたり、反対に動かさずにいたりすることが、身体に負担をかけるという考え方があります。
今回は、東洋医学に伝わる「五労(ごろう)」を取り上げながら、身体を休めることについて考えてみたいと思います。
動かずにじっとしていると、身体はどうなる?
私たちの身体は、筋肉を動かすことで血液やリンパの流れを助けています。
長時間座ったまま、あるいは横になったまま過ごしていると、筋肉を動かす機会が少なくなります。
その結果、身体がこわばったり、重だるさを感じたりすることがあります。
特に、同じ姿勢が長く続くと、首や肩、腰、脚などに負担がかかりやすくなります。
東洋医学では、身体を巡る「気・血・津液(き・けつ・しんえき)」の働きを大切に考えます。
- 気:身体を動かし、温め、さまざまな働きを支えるもの
- 血:全身に栄養を届け、身体を養うもの
- 津液:身体に必要な水分や体液
これらが身体の中を巡り、必要なところに行き渡ることで、身体の働きが保たれると考えられています。
長時間同じ姿勢で過ごしたり、身体を動かす機会が少なくなったりすると、気・血・津液の巡りにも影響が出ると捉えます。
東洋医学に伝わる「五労」
東洋医学には「五労(ごろう)」という考え方があります。
これは、同じ動作や姿勢を長時間続けることによって、身体の特定の働きに負担がかかるというものです。
古典には、次の五つが記されています。
- 久行傷筋(きゅうこうしょうきん)
- 久視傷血(きゅうししょうけつ)
- 久坐傷肉(きゅうざしょうにく)
- 久臥傷気(きゅうがしょうき)
- 久立傷骨(きゅうりつしょうこつ)
ここで使われている「傷」は、身体を損なう、負担をかけるという意味です。
それぞれ、どのようなことを表しているのでしょうか。
① 久行傷筋(きゅうこうしょうきん)
「長時間歩き続けると、筋肉や筋に負担がかかる」
「行」は歩くこと、「筋」は筋肉や腱など、身体を動かすための組織を表します。
歩くことは健康維持に役立つ一方で、長時間歩き続けたり、身体の状態に合わない運動を続けたりすると、筋肉や腱に疲労が蓄積します。
東洋医学では、筋や腱は「肝」と関係が深いと考えます。
肝には、気や血の巡りを調整し、筋や腱の働きを支える役割があるとされています。
そのため、筋肉や腱を使い続けることは、肝に関係する働きにも負担をかけると捉えます。
運動や散歩をするときも、長く歩けばよいというわけではありません。
その日の体調に合わせて、無理のない範囲で行うことが大切です。
② 久視傷血(きゅうししょうけつ)
「長時間 目を使い続けると、血を消耗する」
スマートフォンやパソコンを長時間見続けたり、細かい文字を集中して見たりすると、目に負担がかかります。
東洋医学では、目は「血」と深く関係していると考えます。
血は目に栄養を届け、目の働きを支えるものです。
そのため、目を使い続けることは血を消耗することにつながると捉えます。
目の疲れやかすみ、乾燥、集中力の低下などを感じることもあります。
画面を見る時間が長い方は、途中で目を閉じたり、遠くを眺めたりして、目を休ませる時間をつくりましょう。
③ 久坐傷肉(きゅうざしょうにく)
「長時間座り続けると、筋肉や身体を支える働きに負担がかかる」
「坐」は座ること、「肉」は筋肉や身体の肉づきを表します。
長時間座ったままでいると、腰やお尻、太ももなどの筋肉を動かす機会が少なくなります。
同じ姿勢が続くことで筋肉がこわばり、腰の重さや脚のだるさ、身体の動かしにくさにつながることもあります。
東洋医学では、筋肉や身体の肉づきは「脾」と関係が深いと考えます。
ここでいう脾は、現代医学でいう脾臓だけを指すものではありません。
飲食物から気や血をつくり、全身に栄養を届ける働きなどを含む、東洋医学独自の考え方です。
長時間座り続けることは、脾の働きにも負担をかけると捉えられています。
デスクワークなどで座っている時間が長い方は、時々立ち上がって歩いたり、軽く身体を伸ばしたりしてみましょう。
④ 久臥傷気(きゅうがしょうき)
「長時間横になっていると、気の働きが弱まりやすい」
「臥」は横になって休むことを表します。
疲れていると、横になって過ごす時間が長くなることがあります。
もちろん、睡眠や休息は身体にとって必要です。
ただし、必要以上に長い時間横になり、身体を動かさない状態が続くと、気の巡りや身体を動かす力が弱まりやすいと東洋医学では考えます。
この「気」と関係が深い臓腑の一つが「肺」です。
東洋医学の肺は、呼吸だけでなく、気を全身に巡らせる働きにも関係すると考えられています。
そのため、横になっている時間が長く、身体を動かす機会が少なくなると、
気の巡りが滞り、身体が重く感じたり、動き始めるときにだるさを感じたりすることがあります。
休息をとることは大切ですが、起きている時間には、無理のない範囲で身体を動かすことも必要です。
⑤ 久立傷骨(きゅうりつしょうこつ)
長時間立ち続けると、骨や身体を支える部分に負担がかかる
同じ姿勢で長時間立ち続けると、足腰に負担がかかります。
特に、身体をあまり動かさずに立っていると、脚の筋肉が緊張し続けたり、足腰の重だるさを感じたりすることがあります。
東洋医学では、骨は「腎」と関係が深いと考えます。
腎は成長や発育、老化などにも関係する働きを担うとされ、骨や骨髄を養う働きとも結びついています。
そのため、長時間立ち続けることは、腎に関係する働きにも負担をかけると考えられています。
立ち仕事の方は、適度に座って休んだり、足首を動かしたりするなど、同じ姿勢が続かないように工夫してみてください。
横になっている時間と、心身が休まっている状態は同じ?
横になっていると、身体を支える筋肉の負担は軽くなります。
睡眠をとることも、身体の回復に欠かせません。
ただ、横になっていても、頭の中で仕事のことを考え続けていたり、スマートフォンを見続けていたりすると、気持ちが休まらないことがあります。
身体は動かしていなくても、頭や目を使い続けている状態です。
反対に、短い時間でも、何も考えずにぼんやりしたり、心地よい音楽を聴いたりすることで、気持ちが落ち着くこともあります。
身体を休めることと、気持ちを休めること。
その両方があって、心身の休息につながっていきます。
身体を休めるために、日常でできること
特別なことをする必要はありません。
普段の生活の中で、少し意識を変えるだけでも、身体の休め方は変わってきます。
① 同じ姿勢を長く続けない
座りっぱなし、立ちっぱなしにならないように、時々姿勢を変えましょう。
短い時間でも立ち上がったり、歩いたりすることが大切です。
② 目を休ませる時間をつくる
スマートフォンやパソコンを使っているときは、時々画面から目を離しましょう。
目を閉じて、ゆっくり休ませるのもよい方法です。
③ 深くゆっくり呼吸する
忙しいときや緊張しているときは、呼吸が浅くなりがちです。
無理に大きく吸おうとせず、ゆっくり息を吐くことを意識してみてください。
④ 身体を温める
入浴や温かい飲み物など、自分が心地よいと感じる方法で身体を温めてみましょう。
身体が温まると、筋肉の緊張もゆるみやすくなります。
⑤ 何もしない時間をつくる
何かをしなければと考えず、少しの間、ぼんやり過ごしてみるのもよい休息です。
情報から離れて、静かに過ごす時間をつくってみてください。
身体を動かすことと、何もしない時間をつくること。
どちらか一方に偏らず、その日の状態に合わせて過ごすことが大切です。
経絡治療で、身体の緊張や巡りを整える
身体の疲れや重だるさは、長時間同じ姿勢で過ごすことだけでなく、睡眠や食事、気温の変化、日々のストレスなど、さまざまな要因が関係しています。
しんしん調和鍼灸院では、東洋医学の四診法(望診・聞診・問診・切診)を用いて、お話やお身体の状態を確認し、その日の状態に合わせて施術を行います。
経絡治療では、気血の巡りや身体全体のバランスを整える「本治法」と、
首や肩、腰など、そのときに気になる部分に働きかける「標治法」を組み合わせています。
何もしていないのに疲れが残る、身体が重く感じる、休んでもすっきりしない。
そのようなときは、日々の休息のとり方を見直すとともに、身体全体の状態にも目を向けてみてください。
無理に施術をおすすめすることはありませんので、
「休んでいるのに疲れが抜けない」
「自分に合った身体の休め方が分からない」と感じる方は、一度ご相談ください。
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