疲れているだけでも、鍼灸を受けていいの?

― 「病気ではないけれど、なんとなく疲れている」そんなときに ―

「特に病気があるわけではないけれど、最近ずっと疲れている」

「寝ても疲れが取れない」

「休みの日は何もしたくなくて、ずっと横になっている」

このような状態で、鍼灸を受けてもいいのかな?と思う方もいるかもしれません。


鍼灸というと、「何か症状があるときに受けるもの」というイメージがあるかもしれません。

でも、疲れていること自体も、お身体からのサインのひとつです。


東洋医学では、

疲労を単に「休めば元に戻るもの」とだけ考えるのではなく、

日々の生活の中で身体にどのような負担がかかっているのか、

というところから考えていきます。

東洋医学には「五労」という考え方があります

東洋医学には、「五労(ごろう)」という考え方があります。

これは、日常生活の中で特定の動作を長時間続けることが、身体への負担になるというものです。

  • 久視(きゅうし)……長時間ものを見ることで「血」を傷つける
  • 久臥(きゅうが)……長時間横になっていることで「気」を傷つける
  • 久坐(きゅうざ)……長時間座っていることで「肉」を傷つける
  • 久立(きゅうりつ)……長時間立っていることで「骨」を傷つける
  • 久行(きゅうこう)……長時間歩いたり運動したりすることで「筋」を傷つける

と考えます。


ここでいう「傷つける」は、身体の組織が文字通り傷つくという意味ではありません。

同じ姿勢や動作を長時間続けることで、

その活動に関係する身体の働きに負担がかかるという、

東洋医学的な捉え方です。

今の生活は「久坐」と「久視」が重なりやすい

例えば、仕事で一日中パソコンを使っている方。

長時間画面を見続けるので「久視」にあたり、
同じ姿勢で椅子に座り続けるので「久坐」にもあたります。


さらに、仕事が終わるころにはもう疲れていて、

「今日は何もしたくない」

と、帰宅してからソファやベッドで長時間横になってしまう。

休日も疲れているので、ほとんど家から出ずにゴロゴロして過ごす。


もちろん、疲れているときに休むことは必要です。

ただ、

長時間座って、

長時間ものを見て、

その後は長時間横になっているという生活が続けば、

東洋医学の考え方では、

複数の負担が重なっている状態と捉えることができます。


現代の生活では、こうした状態になっている方は少なくありません。

「休んでいるのに疲れが取れない」のはなぜ?

疲れているなら、休めばいい。

頭ではそう分かっています。

疲労が軽いうちは

「今日は少し早く寝よう」

「少し歩こう」

「お風呂に入ろう」と、

自分で生活を調整することができます。


ところが、疲れがかなり蓄積してくると、

「身体を動かしたほうがいいのは分かっているけど、動く気力がない」

「早く寝たほうがいいと思うけれど、スマホを見てしまう」

「休日くらい何もしたくない」

という状態になってしまうことがあります。


これは、単純に「意志が弱い」という話ではありません。

疲れているからこそ、生活を変えるための余力まで少なくなっていることがあります。


そのため、

疲れる
→ 動かなくなる
→ さらに身体を動かす機会が減る
→ なんとなく重だるい
→ 休みの日も横になってしまう

という流れになり、このループからなかなか抜け出せなくなることがあります。

そんなときに、鍼灸を受けてもいい

「疲れているだけで鍼灸を受けるのは、大げさなのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

でも、鍼灸は「病気がある人だけが受けるもの」と決まっているわけではありません。


疲れがたまっている、身体が重い、休んでもすっきりしない、なんとなく調子が上がらない。

このような段階で、お身体を整えるために鍼灸を受けることもできます。

経絡治療では、今出ている症状だけを見るのではなく、身体全体の状態を確認しながら、気血の状態や経絡のバランスをみていきます。


疲れているからといって、毎回同じような施術をするわけではありません。

その日の脈やお腹、経絡の反応などを確認し、そのときのお身体に合わせて施術していきます。

経絡治療では「気血」を整えていきます

東洋医学では、

身体を動かしたり、活動したりするための働きに「気」が関係し、

身体を養うものとして「血」が関係すると考えます。


疲れが続いているときには、こうした気血の不足や巡りの状態も確認します。


経絡治療では、必要に応じて気血を補いながら、経絡の流れを整えていきます。

「疲れているから、とにかく強い刺激を入れる」という考え方ではありません。

その方の身体が今どのような状態なのかをみながら、必要なところに必要な刺激を加えていきます。


施術を受けたあとに、

「身体が少し軽くなった」

「呼吸がしやすい」

「眠くなってきた」

「頭の中が少しすっきりした」

と感じる方もいます。


こうした変化を感じることで、少し身体を動かしてみよう、今日は早めに休もう、と生活を見直すきっかけになることもあります。

「疲れを取る」だけではなく、疲れをため込まない身体へ

もちろん、鍼灸を受ければ生活習慣を変えなくても大丈夫、ということではありません。

長時間同じ姿勢でいるなら、ときどき立って身体を動かす。

画面を見続けているなら、目を休ませる。

ずっと横になっているなら、体調に合わせて少し身体を動かしてみる。

睡眠時間を確保する。

こうした日々の積み重ねも大切です。


ただ、疲労がかなりたまってしまうと、その生活を変えるための力そのものが出てこないことがあります。


そんなときは、まず身体を整えて、生活を見直すための余力を取り戻していくという考え方もあります。

「分かっているけれど、なかなかできない」

そんな状態のときに、鍼灸をひとつの方法として使っていただければと思います。

「病気ではないから」と我慢しなくても大丈夫です

「病院で検査をしても特に問題はない」

「病気というほどではないけれど、ずっと疲れている」

「休んでも身体が重い」

こうした状態は、つい「もう少し頑張れば大丈夫」とそのままにしてしまいがちです。


でも、身体が疲れていると感じているなら、それは今の生活を少し見直してみるサインかもしれません。

東洋医学では、日々の過ごし方そのものが身体に影響すると考えます。


疲れが軽いうちなら、自分で休んだり、身体を動かしたり、生活を調整することもできます。


それが難しいくらい疲れがたまっているときは、

経絡治療で気血を補い、身体の状態を整えることで、

もう一度自分で身体を整えていくための力をつけていくという考え方があります。


「これくらいの疲れで鍼灸に行っていいのかな?」

と思わなくても大丈夫です。


疲れているからこそ、身体を整える。

そんな利用の仕方もあります。


無理に施術をおすすめすることはありませんので、「最近、疲れが抜けない」「休んでも身体が重い」と感じる方は、お気軽にご相談ください。

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