呼吸が浅いと感じたら、身体のどこに目を向ければいい?
― 肩・胸・お腹の動きに気づき、ゆっくり息を吐く習慣を ―

いつの間にか、呼吸が浅くなっていませんか?
仕事や家事に集中しているとき、スマートフォンを見ているとき、何かを心配しているとき。
ふと気づくと、息を止めていたり、肩に力が入っていたりすることはありませんか?
呼吸は普段、無意識に行っているものです。
そのため、少しくらい呼吸が浅くなっていても、自分では気づかないことがあります。
2020年頃から新型コロナウイルス感染症が広がり、マスクを着用する機会が大幅に増えました。
マスクをしていると息苦しさを感じたり、呼吸がしづらいと感じたりした方もいらっしゃると思います。
また、感染によって多くの方が亡くなり、連日さまざまな情報が報じられました。
感染することへの恐怖や、自分や家族の健康に対する不安を感じ、気持ちが休まらなかった方も少なくなかったのではないでしょうか。
不安や緊張を感じると、呼吸が速くなったり、浅くなったり、無意識に息を止めたりすることがあります。
マスクによる息苦しさや感染への不安が重なり、呼吸の変化を意識する機会が増えた方もいるでしょう。
現在はマスク着用の考え方も変わり、日常生活の中でマスクを外して過ごす機会が増えました。
一方で、人混みや医療機関などでは、今もマスクを着用する方が多くいらっしゃいます。
ここで気をつけたいのは、マスクを着用していたことだけが、呼吸の浅さの原因とは限らないということです。
姿勢や身体の緊張、ストレス、運動不足など、呼吸にはさまざまな要因が関係しています。
だからこそ、まずは自分が普段どのように呼吸しているのかに目を向けてみましょう。
呼吸が浅い状態が続くと、身体や心にどんな影響があるの?
呼吸が浅いと感じること自体は、必ずしも病気を意味するものではありません。
ただし、緊張や不安によって呼吸のパターンが変化している場合、身体や心にもさまざまな変化が現れることがあります。
ここでは、日常生活で気づきやすいものを5つ紹介します。
① 首や肩に力が入りやすくなる
呼吸は、横隔膜をはじめとする呼吸に関わる筋肉が働くことで行われます。
緊張して呼吸が浅くなると、胸や肩まわりの筋肉を使う呼吸が目立つことがあります。
首や肩に余計な力が入った状態が続けば、こわばりや疲労感につながる場合があります。
肩こりが気になる方は、肩を揉むことだけでなく、呼吸をするときに肩が大きく上下していないかも確認してみてください。
② 頭が重い、ふらつくように感じることがある
不安や緊張が強いと、呼吸が速くなったり、必要以上に多く息を吸ったり吐いたりすることがあります。
このような呼吸の変化によって、めまいやふらつき、頭がぼんやりする感じなどが生じることがあります。
ただし、頭痛やめまいにはさまざまな原因があり、呼吸の浅さだけで説明できるわけではありません。
症状が続く場合や、いつもと違う強い症状がある場合は、医療機関に相談してください。
③ 疲れやすく、集中しにくく感じる
仕事や家事に集中していると、呼吸に意識が向かず、知らないうちに息を止めていることがあります。
また、緊張が続いていると、身体に力が入りやすくなり、気持ちも休まりにくくなります。
その結果、疲れを感じたり、頭がすっきりしなかったりすることがあります。
「しっかり休んだはずなのに、なんとなく疲れている」と感じるときは、睡眠や生活リズムだけでなく、日中に身体が緊張し続けていないかも振り返ってみましょう。
④ 不安や緊張が強くなることがある
不安を感じると呼吸が速くなることがあります。
そして、息苦しさや呼吸の変化を感じることで、さらに不安が強くなる場合もあります。
たとえば、息がしづらいと感じると「もっと息を吸わなければ」と思い、何度も大きく息を吸おうとすることがあります。
そのこと自体が呼吸への意識を強め、かえって落ち着かなくなることもあります。
そんなときは、無理にたくさん息を吸おうとせず、まずは肩やあごの力を抜き、自然に息を吐くことから始めてみましょう。
⑤ 寝る前まで気持ちが落ち着きにくい
日中の緊張が続いていると、夜になっても仕事や家事のことを考えてしまい、気持ちを切り替えにくいことがあります。
呼吸が速くなっていたり、身体に力が入ったままだったりすると、リラックスしにくいと感じることもあるでしょう。
寝る前に呼吸をゆっくり整える時間をつくることは、気持ちを落ち着かせ、休息に向かうための習慣のひとつになります。
ただし、睡眠の問題にはさまざまな原因があります。
呼吸を整えるだけですべてが解決するわけではありません。
呼吸が浅いことに気づくには、身体のどこを見ればいい?
呼吸を整えようと思っても、そもそも自分の呼吸が浅いのかどうか、わからない方もいると思います。
そんなときは、呼吸の回数を数えたり、無理に深呼吸をしたりする前に、身体の動きや感覚を確認してみましょう。
1.肩が呼吸のたびに大きく上下していないか
椅子に座って、いつも通りに呼吸をしてみてください。
息を吸うたびに肩が大きく持ち上がっていたり、首の筋肉が緊張していたりしませんか?
胸や肩の動きが目立つからといって、必ずしも呼吸に問題があるわけではありません。
ただ、肩に力が入り続けている場合は、息を吐くときに肩が自然に下がるかを確認してみましょう。
肩を無理に下げようとする必要はありません。まずは、余計な力が入っていないかに気づくことが大切です。
2.胸の動きはどうなっているか
呼吸をすると、胸郭と呼ばれる胸まわりが広がったり、戻ったりします。
胸の動きがほとんど感じられないときは、身体を少し動かしたり、姿勢を変えたりしてみましょう。
ただし、胸の動きには個人差があり、動きが小さいことだけで呼吸が浅いと判断することはできません。
3.お腹は自然に動いているか
息を吸うときには横隔膜が下がり、お腹まわりが自然に広がることがあります。
息を吐くと、お腹も元の状態に戻っていきます。
仰向けになって膝を軽く曲げ、片手をお腹に添えてみてください。
普段通りに呼吸をしたとき、お腹が少し動く感覚はありますか?
お腹を大きく膨らませようと頑張る必要はありません。
手の下で起こる小さな動きを感じるだけで十分です。
胸とお腹のどちらが大きく動くかには個人差があります。
お腹があまり動かないからといって、すぐに呼吸に問題があると考える必要はありません。
4.息を止めたり、歯を食いしばったりしていないか
パソコンで作業をしているとき、スマートフォンを見ているとき、細かい家事をしているときなどは、知らないうちに息を止めていることがあります。
また、あごに力が入って歯を食いしばっていたり、首や肩がこわばっていたりすることもあります。
こうした状態に気づいたら、いったん手を止め、あごをゆるめてみましょう。
息を止めていたことに気づいたら、無理に大きく吸い込まず、自然な呼吸に戻してみてください。
5.呼吸が苦しい、息が足りないと感じていないか
呼吸の状態を確認するときには、身体の動きだけでなく、自分がどのように感じているかも大切です。
「何度も息を吸いたくなる」「ため息が増えた」「息を吸っても満足できない」と感じることはありませんか?
こうした感覚は、不安や緊張によって起こることもありますが、呼吸器や心臓などの病気が関係している場合もあります。
新しく息苦しさが現れたときや、症状が続くときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
突然の強い息苦しさや胸の痛みなどがある場合は、速やかに救急の助けを求めましょう。
深呼吸をすると、どんなよいことがあるのでしょうか?
ここでいう深呼吸は、胸いっぱいに空気を吸い込むことではありません。
身体に余計な力を入れず、無理のない範囲でゆっくり息を吸い、ゆっくり吐くことです。
頑張って大きく吸おうとすると、肩や首に力が入ってしまうことがあります。
呼吸を整えるときは、息をたくさん吸うことよりも、心地よく呼吸できることを大切にしましょう。
ゆっくりとした呼吸を習慣にすると、次のようなことが期待できます。
① 緊張をゆるめ、気持ちを落ち着かせる
緊張しているときは、呼吸が速くなり、身体も活動的な状態になりやすくなります。
ゆっくりと呼吸することは、身体のリラックス反応を促し、気持ちを落ち着かせる助けになります。
仕事の合間や、慌ただしい家事がひと段落したときなどに、数回ゆっくり呼吸してみてください。
② 首や肩に入った力に気づきやすくなる
呼吸に意識を向けると、肩が上がっていることや、あごを噛みしめていることに気づく場合があります。
息を吐きながら肩や首の力が少しゆるむか、確かめてみましょう。
呼吸だけで肩こりが解消するわけではありませんが、身体の緊張に気づくきっかけになります。
③ 頭の中の考えごとから、いったん離れられる
忙しいときは、目の前の作業をしながら、次の予定や心配ごとを考えていることがあります。
呼吸に意識を向けると、頭の中で考え続けていたことから、いったん注意を離すことができます。
悩みや考えごとをなくす必要はありません。
今、自分が息を吸って、吐いていることに気づくだけでも、ひと息つくきっかけになります。
④ 休息に切り替える習慣をつくりやすくなる
仕事から家事へ、家事から育児へと、休む間もなく次のことに取りかかっていませんか?
ひとつの作業が終わったときに、ゆっくり呼吸をする時間をつくると、次の行動に移る前に身体を休めるきっかけになります。
呼吸を整えることを、1日の区切りとして取り入れてみましょう。
⑤ 自分の身体の変化に気づきやすくなる
呼吸に意識を向ける習慣ができると、「今日は肩に力が入っている」「いつもより息が浅く感じる」といった変化に気づきやすくなります。
身体の変化に気づけば、姿勢を変えたり、少し歩いたり、休憩を取ったりするきっかけにもなります。
深呼吸は、身体の状態を知るための簡単な方法のひとつです。
ただし、呼吸を意識することでかえって苦しくなったり、不安が強くなったりする方もいます。
その場合は無理に続けず、自然な呼吸に戻してください。
今日からできる、やさしい呼吸のセルフケア
では、実際に呼吸を整えるには、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、仕事や家事の合間にも取り入れやすい方法をご紹介します。
ステップ1:楽な姿勢をつくる
椅子に座り、足の裏を床につけます。
背筋を無理に伸ばしたり、胸を張ったりする必要はありません。
肩やあごの力を抜き、楽に座れる姿勢を探しましょう。
ステップ2:いつもの呼吸を確かめる
まずは、呼吸を変えずに数回、自然に呼吸をしてみます。
肩や胸、お腹がどのように動いているか、息を止めていないかを確認します。
このとき、呼吸が浅いか深いかを厳密に判断する必要はありません。
今の自分の呼吸を知ることが目的です。
ステップ3:息をゆっくり吐いてみる
鼻から無理なく息を吸い、口または鼻からゆっくりと息を吐きます。
吐く時間を少し長めにしてみてもよいでしょう。
ただし、息を吐き切ろうとしたり、長く吐くことを頑張ったりする必要はありません。
自然に息が吸いたくなったら、また吸います。
ステップ4:肩やお腹の感覚を確かめる
息を吐いたあと、肩の力が少し抜けたか、お腹の動きが感じられるかを確かめます。
何も変化を感じなくても問題ありません。
深呼吸をすれば必ず身体がゆるむ、というわけではありません。
心地よく呼吸できているかを大切にしましょう。
まずは1〜3分ほど、無理のない範囲で試してみてください。
呼吸を意識すると苦しくなる場合や、めまいが出る場合は中止し、自然な呼吸に戻してください。
息苦しさが続くときは、セルフケアだけで対処せず医療機関に相談しましょう。
東洋医学では、呼吸と気の巡りをどう考えるのでしょうか?
東洋医学では、呼吸と関係の深い臓腑のひとつに「肺」があります。
東洋医学でいう肺は、空気を取り入れる働きだけでなく、気を全身に巡らせる働きや、身体の表面を守り、潤いを行き渡らせる働きなどにも関係すると考えられています。
また、「肝」は気の巡りを調節する働きに関係するとされ、精神的な緊張や気疲れが続くときには、肝の働きにも目を向けます。
不安や緊張が続いていると、呼吸が浅くなったり、肩や首に力が入ったりすることがあります。
東洋医学では、こうした状態を呼吸だけの問題として捉えるのではなく、気の巡りや身体全体のバランスと合わせて考えます。
もちろん、呼吸が浅いから肺や肝に問題があると判断するわけではありません。
東洋医学でいう臓腑の働きは、現代医学における肺や肝臓そのものと同じ意味ではないためです。
経絡治療では、脈やお腹、経絡やツボの反応などを確認し、そのときのお身体の状態に合わせて施術を組み立てていきます。
首や肩のこわばりが気になる場合でも、その部分だけを見るのではなく、全身のバランスを考えながら施術することを大切にしています。
経絡治療の施術中に、自然と深呼吸をされる方もいます
しんしん調和鍼灸院で経絡治療を受けている方の中には、施術中に自然と深く息を吐いたり、ゆっくり呼吸をされたりする方がいらっしゃいます。
普段は仕事や家事に集中していて、呼吸を意識する機会がほとんどない方も、施術中は横になって身体を休める時間を持つことができます。
施術を受けながら、身体の力が少し抜けてきたり、呼吸がゆっくりになったりすることがあるのです。
経絡治療では、四診法によってお身体の状態を確認し、その方に合ったツボを選んで施術します。
全身のバランスを整えることを目指す「本治法」と、首や肩など、今気になっている部分に対応する「標治法」を組み合わせて行います。
施術中に呼吸が変化することはありますが、すべての方に同じ反応が起こるわけではありません。
また、呼吸が深くなることだけで、身体が整ったと判断するわけでもありません。
日頃から呼吸が浅いと感じる方は、まず自分の呼吸や身体の状態に目を向けてみてください。
深呼吸を頑張る必要はありません。
肩の力を抜き、自然に息を吐く。
そんな小さな習慣から始めてみましょう。
無理に施術をおすすめすることはありませんので、「呼吸が浅い気がする」「首や肩に力が入りやすい」と感じる方は、一度ご相談ください。
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